研究課題/領域番号 |
22K18947
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分28:ナノマイクロ科学およびその関連分野
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
筒井 真楠 大阪大学, 産業科学研究所, 准教授 (50546596)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2023年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2022年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
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キーワード | ナノポア / 局所加熱 / DNA / イオン電流 / ナノ流体 / 微小熱 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、固体ナノポア法とナノヒータ技術を融合させた新規ナノポアセンサを創製する。まず、ナノポアとナノヒータの集積構造を用いて局所加熱されたナノポア空間を形成する。そして、イオン電流計測による精製DNAの1分子検出を実施し、当該ナノ空間をDNAが通過する際の、局所熱による1本鎖化ならびに1分子熱泳動機構を解明する。さらに本手法を発展させ、ナノヒータの局所熱を生体粒子の外膜破壊にも活用することで、1生体粒子からDNAの抽出・1本鎖化・1分子検出を実行できる新規1分子検出法を創成する
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研究実績の概要 |
ナノヒータ組込みナノポアを用いたDNAの1分子検出を実施した。実験では、直径100 nmのナノポアの周囲に渦巻き状の白金ナノワイヤを集積した構造を作製した。まず、両面が厚さ50 nmの窒化シリコン膜でコートされたシリコンウエハの片面を部分的にウェットエッチング処理することで、約100 μm四方の大きさの窒化シリコンメンブレンを形成した。その後、電子線リソグラフィにより渦巻きパターンを描画し、厚さ20 nmの白金層をスパッタ法により蒸着したのち、有機溶媒中でリフトオフした。そうして作製した白金ナノワイヤの中央部に、今度は電子線リソグラフィにより直径120 nmの円を描画した。現像後、レジスト層をマスクとして用い、反応性イオンエッチングによりナノポアを開口させた。最後に、メンブレン上面から化学蒸着法により厚さ20 nmの二酸化ケイ素層を蒸着した。測定では、当該ナノワイヤをジュール加熱させた状態でイオン電流計測によるλDNAの1分子検出を実施した。ナノポアを通るイオン電流は、ヒータ温度の上昇に伴い増大する傾向を示した。これは、虚構所的に昇温された水の粘性が低下したことによるものと解釈できる。一方、DNAの捕捉効率はヒータ温度に対して敏感に変化し、DNAの泳動ダイナミクスにおいて熱泳動力の影響が顕著であることを確認した。また、ある一定温度を超えるとDNAはナノポア近傍の局所熱により2本の1本鎖DNAに分裂することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ヒータ加熱によりナノポア温度を上昇させると、DNAの1本鎖化が可能になるだけでなく、局所温度を精密に制御すれば、ナノポア内が蒸気で満たされた状態を保つことができ、その際イオン電導度が10倍以上向上する、という新現象を発見できた。今後、この蒸気で満たされた制限ナノ空間におけるイオン輸送現象や1分子泳動ダイナミクスに関する新たな研究展開が望める。
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今後の研究の推進方策 |
研究の進捗は順調であり、特に想定外の課題等も出てきていない。このため、今後の研究は計画通り進めていく予定である。
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