研究課題/領域番号 |
22K19346
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分45:個体レベルから集団レベルの生物学と人類学およびその関連分野
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
源 利文 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (50450656)
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研究分担者 |
山中 裕樹 龍谷大学, 先端理工学部, 准教授 (60455227)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2023年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2022年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
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キーワード | 環境DNA / エピジェネティクス / メチル化 / 繁殖活動 |
研究開始時の研究の概要 |
ここ10年ほどの間に「環境DNA分析」と呼ばれる技術が発展しているが、環境DNA分析には、採捕すればすぐに分かる、生物の状態に関わる情報(親か子か、オスかメスかなど)が得られないという弱点があった。本研究では、環境DNA分析によって、遺伝子の修飾状態を把握する手法開発に挑戦する。このように「水から」生物の状態を把握することができれば、繁殖地の探索などを通じて生物多様性の保護、水産養殖における飼育種のストレス状態の指標化などにも有用である。本研究はその第一段階としての概念実証を目指すものであるが、それに成功すれば、環境DNA分析が生物モニタリングに与えたインパクト以上の影響を与えることだろう。
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研究実績の概要 |
研究項目1. 環境DNAにおけるDNAメチル化修飾状態の解析:水槽内で飼育したゼブラフィッシュを対象に、組織サンプルと環境DNAサンプルをそれぞれ解析し、ゼブラフィッシュのゲノム全体のメチル化状態が組織中と環境サンプルで一致するかを検証した。その結果、環境DNA濃度が分解によって急速に減少していくのに対して、メチル化率は分解の影響を受けず放出から72時間が経過した後も安定的に保たれていた。また、環境DNAのメチル化率は皮膚や脳、精巣などの組織DNAと同程度であり、環境DNAは組織DNAのメチル化状態を正しく反映していることが示唆された。一方で、卵巣の組織DNAのみ他の組織よりも明確にメチル化率が低かった。さらに、ゼブラフィッシュの繁殖活動がメチル化解析の結果に及ぼす影響を調べると、メチル化率は時間帯による差異がなかったものの、繁殖活動が活発に起きる時間帯では多くのサンプルから卵巣(成熟卵)に由来するものと考えられるメチル化率0%のリードを検出することに成功した。検出される数は時間帯によって有意な差があり、環境DNAのメチル化解析の応用可能性として、野外環境での魚の繁殖活動の検出が期待できる結果となった。 研究項目2.エピジェネティクスマーカーの探索:近年出版されているDNAのメチル化に関わる論文の収集を行って、モノアラガイやゼブラフィッシュを用いた研究例から、適切な対象遺伝子やメチル化解析手法のトレンドについて整理した。効率的にCpG領域等のメチル化の程度を把握する手法としてRRBS(Reduced Representation Bisulfite Sequencing)を選定し、実験準備を進めた。一方で、メチル化感受性をもつ制限酵素とPCRを用いた特定遺伝子領域を狙った分析方法についても検討を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
いずれの計画も順調であり、当初の予定通りに進行している。
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今後の研究の推進方策 |
ゼブラフィッシュで確認された繁殖活動をエピジェネティックマーカーから推定できる手法を、同じくコイ科の魚類であるコイ、カワバタモロコなどにも適用可能であるかを検討する。この検討で本手法がコイ科一般に適用可能であることが示された場合には、他の魚種についても検討する。 昨年度に引き続き、環境DNA分析による発生段階およびストレス状態のエピジェノミクスマーカーを探索する。 エピジェネティックマーカーによる生理状態等の観測について、環境RNAなどの他の手法による推定結果と比較するため、環境RNA分析も並行して行う。
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