研究課題/領域番号 |
22K19449
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分50:腫瘍学およびその関連分野
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
清野 研一郎 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 教授 (20312845)
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研究分担者 |
和田 はるか 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 准教授 (70392181)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2023年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2022年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
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キーワード | がんワクチン |
研究開始時の研究の概要 |
我々はこれまでのマウスを用いた研究で、がん細胞に導入するとワクチン効果を付与する自然免疫関連遺伝子セットを発見した。本研究では必要な遺伝子を絞り込み、そのメカニズムを明らかにする。本研究の結果ヒトがん細胞にワクチン効果を付与する遺伝子(群)が同定されれば、将来的には手術でがんを摘出した後、同組織から得られたがん細胞にそれを導入し、放射線照射の後に全細胞型ワクチン(whole cell vaccine)として接種するという戦略が考えられる。
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研究実績の概要 |
我々はこれまでのマウスを用いた研究で、乳がん細胞(4T1)に放射線照射し事前に生体に接種しておくと、その後同じがん細胞を接種しても腫瘍形成しないというワクチン効果を持つ細胞株(4T1-S)と効果を持たない細胞株(4T1-A)を同定した。このワクチン効果はT細胞欠損マウスでは見られないことから、T細胞依存的な反応と考えられた(Abe et al. Hum Cell 29:58-66, 2016)。その後、既報により同様の効果を持つことが知られている他の細胞株(CT26、MCA205)、持たないとされている細胞株(B16)を準備し、それぞれの放射線照射後の遺伝子発現を比較検討した。「FPKMの差が5倍以上、なおかつそれ自身のFPKMが20以上(高発現)」という(厳しい)条件で探索すると、非常に興味深いことに、ワクチン効果を持つ細胞群では自然免疫に関する遺伝子(Innate immunity-related gene: Irg)が共通して上昇していることが判明した。そこで、予備検討として同遺伝子セットのうち上位3つの遺伝子(Irg1, Irg2, Irg3)を中等度のワクチン効果を示すCT26に導入しマウスにワクチンとして接種したところ、100%のマウスで完全に野生型がん細胞の生着を抑制した(下図)。さらに、ワクチン効果を持たない4T1-Aに遺伝子導入しマウスに接種したところ、完全ではないがワクチン効果を発揮するようになった(次頁図)。すなわち、我々が発見した遺伝子セットは、ワクチン効果を持たないがん細胞にその効果を付与する能力があることが予想された。 本年度はそのメカニズム解析を行なった。放射線照射した4T1-Sを接種した近傍のリンパ節を調べるとIFN-gの発現が高くなっていることが判明した。細胞レベルで調べると、T細胞ならびにB細胞でIFN-gの発現が高かった。そこでB細胞を除去すべく抗CD20抗体を投与すると、上記のワクチン効果は消失した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
4T1-Sによるワクチン効果のメカニズム解析が進み、論文投稿にまで至ったことから。
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今後の研究の推進方策 |
他の細胞でも同様にワクチン効果を誘導可能で亞あるか、一旦生着したがんに対しても有効であるかどうか(治療ワクチン)、ヒトのがんでも同様の効果が得られるかどうか、などについて検討を行う。
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