研究課題/領域番号 |
22K19472
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分50:腫瘍学およびその関連分野
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研究機関 | 愛知県がんセンター(研究所) |
研究代表者 |
関戸 好孝 愛知県がんセンター(研究所), 分子腫瘍学分野, 副所長兼分野長 (00311712)
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研究分担者 |
佐藤 龍洋 愛知県がんセンター(研究所), 分子腫瘍学分野, 主任研究員 (70547893)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2023年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2022年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
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キーワード | 悪性中皮腫 / エントーシス / 相互封入 / 細胞株 / 細胞接着 |
研究開始時の研究の概要 |
細胞の相互封入所見の一つである“エントーシス”はがん細胞で生じる。取り込まれた細胞は細胞死に至るばかりでなく様々な運命を辿る。エントーシスのがんにおける意義・本態は全く明らかではなく極めて不思議な現象と考えられる。悪性中皮腫細胞はエントーシスが特に高頻度に起きるため、悪性中皮腫細胞の生存・増殖に有利に働いている可能性が高い。エントーシスを誘導させた悪性中皮腫細胞株を用いて細胞内における蛋白や分子の変化を解析し、その機構と意義を明らかにする。
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研究実績の概要 |
細胞の相互封入所見の一つである「エントーシス:entosis」はがん細胞で生じる。取り込まれた細胞は細胞死に至るばかりでなく様々な運命を辿る。エントーシスのがんにおける意義・本態は全く明らかではなく極めて不思議な現象と考えられる。他の癌腫に比べ悪性中皮腫細胞はエントーシスが特に高頻度に起きることを我々は明らかにしてきたが、悪性中皮腫細胞の生存・増殖に有利に働いている可能性が高い。 我々が樹立した悪性中皮腫細胞株パネルの内から、エントーシス形成時の形態的特徴が安定で、非エントーシス細胞との区別が特に容易な悪性中皮腫細胞株に、Lifeact-GFPあるいはLifeact-mRuby2をレンチウイルスを用いて安定発現させ、さらにFACS装置によるソーティングや蛍光安定発現株のクローニング等を行ってエントーシス観察に最適な細胞株を樹立した。 細胞内形態の変化を経時的に解析するため、蛍光タンパク質と融合したチューブリンやヒストンを安定発現させた。同時に、一過性の蛍光ラベル付与試薬であるCytoTrackerや、NucSpot、TubulinTracker等を検討した。それぞれの条件においてエントーシス誘導効率の測定や細胞形態の経時的観察を行い、解析に最も適したアッセイ条件を決定した。一方、エントーシス形成細胞を濃縮し、そのOuter(外側)/Inner(内側)cellを区別して解析するために準備を進めていた細胞表面抗原発現細胞については、想定していた表面抗原が安定して発現せず分解されることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
エントーシスが高度に誘導される悪性中皮腫細胞株から3株を選択し、アッセイ系に最適な細胞株の抽出を行った。最もエントーシス形成時の形態的特徴が安定で、非エントーシス細胞との区別が容易であるとして、Y-MESO-12細胞を同定した。この細胞に、Lifeact-GFPあるいはLifeact-mRuby2をレンチウイルスを用いて安定発現させ、さらにFACS装置によるソーティングや蛍光安定発現株のクローニング等を行ってエントーシス観察に最適な細胞株を決定した。 また、細胞内形態の変化を経時的に解析するため、蛍光タンパク質と融合したチューブリンやヒストンが安定発現した細胞株を樹立した。同時に、一過性の蛍光ラベル付与試薬であるCytoTrackerや、NucSpot、TubulinTracker等を検討した。それぞれの条件においてエントーシス誘導効率の測定や細胞形態の経時的観察を行い、解析に最も適したアッセイ条件を決定した。一方、エントーシス形成細胞を濃縮し、そのOuter(外側)/Inner(内側)cellを区別して解析するために準備を進めていた細胞表面抗原発現細胞については、想定していた表面抗原が安定して発現せず分解されることがわかった。現在、解析に必要な細胞株の作製をさらに進めている。
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今後の研究の推進方策 |
FLAG等の細胞表面抗原を発現させる手法に代わって、エントーシス形成細胞のOuter/Inner cellを識別する実験系の構築を進める。これまでにクローニングした細胞の解析から、内側・外側に移行しやすい株があることが分かってきた。この偏りをさらに高めることで細胞表面抗原による細胞のソーティングなしにアッセイが可能となる。そこで、Lifeact-GFPあるいはLifeact-mRuby2を発現する細胞のクローニングをさらに進め、本研究遂行に最適な細胞株を選別する。 これらの細胞のうち、片方を炭素13C6の非放射性同位体が付与したリジンを添加した培養液で培養し、もう片方を通常の炭素12C6を含む培養液で培養することで、質量分析においてどちらの細胞由来の分子か識別可能にする。事前に検討した条件でエントーシスを誘導し、細胞から蛋白質を溶出する。固相化金属アフィニティークロマトグラフィーや免疫沈降によってリン酸化ペプチドを濃縮した後、LC-MS/MS 解析を行う。この系によりOuter/Inner cellそれぞれで活性化した蛋白質を網羅的に解析することが可能となる。同定された蛋白に対し阻害(誘導)剤が利用可能な場合にはエントーシスが阻害(誘導)されるか検討する。薬剤が利用できない場合には遺伝子ノックダウンや過剰発現を行う。
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