研究課題
挑戦的研究(萌芽)
本研究は、単一細胞空間的トランスクリプトミクス解析技術と細胞バーコーディングによるがん細胞のクローナリティ追跡技術を用いて、癌微小環境の多様性ががん細胞のクローン拡大に与える影響を解明することを目的とし、本研究を通じて癌微小環境を標的とした膵癌の新たな創薬を目指す。
癌微小環境の多様性を明らかにすることを目的に、ヒト膵癌組織とマウス膵癌組織を用いてシングルセルトランスクリプトーム解析並びにVisiumを用いた空間的トランスクリプトーム解析や免疫染色を実施した。マウスとヒト膵癌組織の検討から、Arg1、Nos2、S100A8、S100A9、TGFーβを産生する腫瘍促進的な多核球系骨髄由来免疫抑制細胞が増加している集団が一定割合で存在しており、これらの細胞が存在している膵癌患者では生命予後が不良となることを見出した。また、癌微小環境内へのこの免疫抑制細胞の遊走や活性化には、腫瘍や腫瘍関連マクロファージなどが産生するIL-1βが重要な働きをしており、IL-1βが腫瘍細胞からのCXCL1、CXCL2などのケモカイン並びにCSF2産生を促すことでこの免疫抑制細胞を腫瘍内へと浸潤させていることが明らかになった。さらに、この免疫抑制細胞は、CD8T細胞からのIFNγやグランザイム産生を抑制させることで、抗腫瘍免疫を減弱させていることが明らかになった。すなわち、癌微小環境内における、癌細胞とマクロファージ、多核球系骨髄由来免疫抑制細胞とCD8T細胞の相互作用が、膵癌の進展において重要であることを明らかになった。これらのことを論文化した。さらに、この仕組みは胆膵癌に共通する部分が存在し、胆道癌においても、炎症を介して骨髄球系細胞が腫瘍内に浸潤し、癌細胞の進展を促していることを見出しており、研究を継続している。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
J Exp Clin Cancer Res
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