研究課題/領域番号 |
22K19964
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0101:思想、芸術およびその関連分野
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
田村 康貴 長崎大学, 多文化社会学部, 助教 (40952651)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | ベルクソン / デュルケーム / 倫理学 / 道徳教育 / フランス第三共和政 |
研究開始時の研究の概要 |
従来の倫理学史研究では、イギリスやドイツと比べると、フランスの倫理学は限定的にしか論じられてこなかった。だが近現代フランスには、同時代の英独倫理学とは一線を画す思想が見られる。なかでも第三共和政期にベルクソンやデュルケームらが繰り広げた道徳教育論争は、いまだ充分に解明されていないフランス倫理学の理念や覇権の変遷に関する私たちの理解を深める点で研究する意義が大きい。そこで本研究では、道徳教育論争の進展に伴い頻繁に改変された道徳教育のカリキュラムや教科書や副読本を調査した上でベルクソンとデュルケームの著作を精読することにより両者の倫理思想を解明し、その現代的意義を示すことを目指す。
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研究成果の概要 |
本研究は、倫理学史と道徳教育史の両面で成果をあげることができた。 倫理学史に関する成果としては、第一に、ベルクソンとデュルケームに関する先行研究の妥当性を批判的に検証し、新たな解釈を提示することができた。第二に、第三共和政期に登場した複数の倫理学説とベルクソンの倫理思想との関連を考察することにより、『道徳と宗教の二源泉』以前のベルクソン哲学が有する倫理的含意を明らかにすることができた。 道徳教育史に関する成果としては、第三共和政の道徳教育の鍵概念である「道徳的直観」に着目し、フランス・スピリチュアリスムからの理論的影響や、フェルディナン・ビュイッソンによる解釈変更の実態を解明することができた。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
ベルクソン研究としては、先行研究があまり注目してこなかったベルクソンの道徳教育論を軸に、彼の思想の倫理的含意を解明した点に意義があると言える。また、デュルケーム研究としては、社会学や教育学ではなく倫理学の観点から、彼の思想の哲学的ルーツや同時代の自然科学からの影響を明らかにした点に意義がある。 さらに本研究では、いかにして人に道徳を教えるべきか、という道徳教育の方法をめぐる問いに対して、倫理学がなしうる実践的貢献の射程を考察した。第三共和政期フランスにおける倫理思想と道徳教育の相関関係を批判的に検討した本研究は、現代倫理学の知見を踏まえた新たな道徳教育論構築の端緒にもなりうると思われる。
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