研究課題/領域番号 |
22K20328
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0110:心理学およびその関連分野
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研究機関 | 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
中武 優子 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所 精神薬理研究部, リサーチフェロー (40966800)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | ストレス脆弱性 / 心理的ストレス / 幼少期トラウマ / マウス / 精神疾患 / オキシトシン / トラウマ |
研究開始時の研究の概要 |
幼少期は脳内の神経回路が発達する重要な時期であることから、幼少期のトラウマ経験は精神機能の発達に悪影響を及ぼすことが懸念される。一方、神経ペプチドであるオキシトシンは、ストレス反応の主軸であるHPA系を抑制する作用を持ち、その受容体は幼少期に発現のピークを迎える。そのため、幼少期のトラウマ経験はHPA系の調節に関わるオキシトシン神経系の発達を阻害し、後のストレス脆弱性を生み出す可能性がある。本研究では、幼少期マウスに社会的敗北場面を目撃させ、成長後のストレス脆弱性とオキシトシン神経系の発達および機能に及ぼす影響を調べることでこの可能性を検証する。
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研究成果の概要 |
本研究では、幼少期の心理社会的なトラウマ経験が成長後の情動とストレス脆弱性に及ぼす影響について検討した。その結果、幼少期のトラウマ経験単独では成長後の情動に影響を及ぼさないことが明らかとなった。一方、成体期に単独では影響が認められない軽度のストレスを負荷したところ、血中コルチコステロン値やうつ様行動および不安様行動が幼少期非トラウマ経験群と比較して有意に増加することが示された。さらに、内側前頭前皮質では、炎症に関連する遺伝子発現の上昇が認められた。これらのことから、幼少期トラウマ経験は、後のストレスに対する脆弱性を形成し、うつ様行動や不安様行動などの情動変容を誘発させることが示唆された。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
幼少期のトラウマ経験は、成長後にうつ病や不安障害などの精神疾患の発症率を増加させる要因の1つである。これは、神経回路が未成熟な幼少期に外部からの刺激が加わることで正常な神経発達が阻害され、後のストレスなどの刺激に対する脆弱性が生じるためと考えられている。 本研究では幼少期トラウマモデルを作成し、心理社会的なトラウマ経験が後のストレスに対する反応を増大させ、うつ様行動や不安様行動などを誘発させることを明らかにした。成体期の軽度なストレス負荷により情動変容が生じる幼少期トラウマモデルは、ストレス関連精神疾患の病態解明を進める上で有益なモデルとなることが期待される。
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