研究課題/領域番号 |
22K20337
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0201:代数学、幾何学、解析学、応用数学およびその関連分野
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
林 雅行 早稲田大学, 理工学術院総合研究所(理工学研究所), その他(招聘研究員) (60967850)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 非線形分散型方程式 / 非線形シュレディンガー方程式 / 定常解 / 孤立波 / 不安定性 / 変分法 / 進行波解 / 代数ソリトン / 安定性 |
研究開始時の研究の概要 |
非線形分散型方程式における孤立波を数学的に解析し,孤立波近傍の解の時間大域挙動を明らかにすることを目指す.特に,空間遠方で減衰が遅い孤立波(代数ソリトン)に焦点を当てて研究を進めていく.代数ソリトンは近年の研究で重要性が次第に認識されてきているが,空間遠方で指数的な減衰をもつ通常の孤立波と比べて解析に様々な困難をもたらし,安定性や不安定性といった基本的な問題を含めて未解決な問題が多い.本研究では,一般論の枠組みに入らない孤立波(代数ソリトンが典型例)の安定性/不安定性理論の構築,また不安定な孤立波近傍の大域ダイナミクスの解明を目指して解析手法を整備していく.
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研究実績の概要 |
本年度は二重冪相互作用を持つ非線形シュレディンガー方程式(NLS)における定常解の不安定性の研究を中心に行った。定常解は空間遠方で代数的な減衰をし、指数減衰する通常の定在波と比べて性質が大きく異なり、解析も難しい。安定性/不安定性に関しては線形化作用素のスペクトルの観点から一般論にのせることができず、特に正の周波数をもつ定在波の場合と異なり、線形化作用素の強圧性がエネルギー空間の枠組みで成り立たないことが主要な難しさとなる。 本研究ではまず、周波数でパラメータ付けされた定在波の族に対して、零周波数における片側導函数をODE的手法で構成し、その遠方における最適な減衰度/増大度を導出した。次にこの片側導函数を用いて、定在波の不安定性の一般論と整合する不安定方向を構成し、変分的特徴付けとリャプノフ汎函数の議論を経由して定常解の不安定性を証明した。エネルギー空間に属さない片側導函数を適切に局所化し、線形化作用素の強圧性の代わりに定常解の変分的特徴付けを応用することが解析の重要なポイントである。1次元の場合は最適と期待される条件のもとで定常解の不安定性を証明することに成功した。解析の全体的な流れは多次元にも適用できるが、いくつか技術的な問題点が現れ、その一部は今後の課題として残されている。また不安定性理論における片側導函数の構成は臨界減衰をもつポテンシャル付き線形シュレディンガー作用素の理論と密接な関連性があることが分かった。 上記以外の成果としては、昨年度から研究していたNLSの連立系における進行波の研究結果を論文に纏め、Math. Ann.に掲載受理された。進行波の変分問題において、エネルギー臨界の問題が現れること、プロファイルの楕円型方程式から非局所的な問題が現れることなど、いくつか興味深い観点を新たに発見した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
定常解(代数ソリトン)の不安定性は従来の一般論の枠組みから外れ未解決のまま残されていた問題である。本研究で整備された解析手法は定常解の新たな性質を捉えており、より一般的な設定においても拡張が期待できる手法となっている。線形シュレディンガー作用素の理論との密接な関連性からは、代数ソリトンにまつわる数理の豊穣さを垣間見ることができ、興味深い。一方で多次元の不安定性の解析で現れる技術的問題は本年度中にすべて解決することができず、今後の課題として残されている。NLSの連立系の研究においては、問題の豊富さを見出し、今後の発展が期待できる一方で、解析の技術開発の観点からは進展があまりなかった。以上を勘案しておおむね順調の進捗と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
多次元における二重冪NLSの定常解の不安定性理論を完成させる。本年度の研究で明らかになった解析の技術的問題は線形シュレディンガー作用素の理論で現れる臨界性の難しさに起因している。そこで近年発展している臨界減衰をもつポテンシャル付き線形シュレディンガー作用素の理論との関連性を整備し、問題点の解決を試みる。次年度は定常解の安定性の問題にも取り組む予定である。その他、上記のNLSの連立系や微分型NLS、対数型NLS、半波動方程式など、孤立波の構造が豊かな非線形分散型方程式の研究も進めていく。
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