研究課題/領域番号 |
22K20443
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0303:土木工学、社会システム工学、安全工学、防災工学およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
栗原 遼大 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (60964640)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | PC鋼材破断 / 付着破壊 / プレストレストコンクリート / デジタルツイン / 構造性能評価 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の最終的な目標は既設PC構造物のデジタルツインにより,現場での点検結果と数値解析の相互に情報共有できる環境を構築することである.特に現象の追跡の困難である,PC鋼材の破断現象を追跡する.PC鋼材の腐食により発生する複雑な現象を再現する解析モデル,フルスケール解析における平均化モデルが課題となり,要素実験や解析による精緻な現象追跡と平均モデル化,フルスケール解析への適用及び実橋梁との比較による検証,及び実務展開を見据えた検討を行う.
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、内部鋼材が腐食劣化した既設プレストレストコンクリート(PC)構造物の残存構造性能に対する数値解析手法を高度化すること,既設PC構造物のデジタルツインにより,現場での点検結果と数値解析の情報が相互に共有できる環境を構築することを目的とする.局所腐食や破断といった不均一な応力状態の追跡とフルスケール適用でための簡素化が主な課題である. 本年度は部材内に腐食劣化の極端な状態である,鋼材破断時の挙動に着目した.現象を精緻に捉えるため,数値解析と実験の両面で研究を行うが,数値解析による検討と実験の准部を行った.有限要素法解析を用い,鋼材,グラウト,コンクリートを3次元ソリッド要素,シース管を積層シェル要素,鋼材とグラウト間,グラウトとシース管間の応力伝達を境界要素でモデル化することで破断時挙動の再現を試みた.既往の研究における破断時のひずみ分布をよく再現できると共に,破断部位周囲のすべりが発生するが,ある程度離れた位置でのグラウトモルタルが圧縮力をうけることで応力が伝達することで,健全なプレストレスが破断位置から離れるにしたがって回復し,鋼材破断時のメカニズムを明らかにした.部材の力学的性状についても数値解析を用いて評価を行った.鋼材破断位置やグラウトの物性,プレストレス力の多寡といったパラメータに着目し,上記の精密なモデルを用いて鋼材破断が曲げ性状に与える影響を評価した.鋼材破断位置からある程度離れればプレストレスが回復するが,この距離には緊張力が大きく影響を与え,鋼材破断位置によって健全なプレストレスが残存する範囲が変わるため,同じ程度の破断状況であっても曲げ性状が大きく異なることがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画における本年度の目標であった現象分析は精密な有限要素モデルを用いた検討により達成できた.検証のための実験を残しているが,実験装置は完成しており計測を行うのみで,次年度早々に行う予定である.フルスケール解析適用手法についても,1次元・3次元複合モデルの作成は完了しており,本年度の成果を用いて鋼材と周囲のコンクリートへの応力伝達構成則を提案することを予定している.
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今後の研究の推進方策 |
破断時応答の現象の検証のための実験を行う.これは,鋼材,グラウトの境界面の破壊にのみ着目した実験で,PC鋼材の種類や緊張力をパラメータとし,本年度行った数値解析モデルの妥当性を検証する.それら機構分析の結果に基づき,フルスケール解析への適用を行う.一次元要素で鋼材,グラウト,シースの総断面としてモデル化し,周囲のソリッド要素との応力伝達をモデル化する.腐食による断面欠損は断面情報として入力可能であるため,一次元要素とソリッド要素の応力伝達のモデル化によって,腐食劣化時の応答をフルスケールでも適用可能な簡素なモデルで,p解析でとらえることを目標とする.
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