本研究では、下顎骨の経時的な変化を生化学的に分析することにより、生理的老化による下顎骨の骨質の変化を全身骨と比較し検証することを目的としている。骨質の評価をするためにI型コラーゲンの量や性質に着目した。コラーゲンの量や性質を検証するために高速液体クロマトグラフィーを用いたアミノ酸分析を行い、6、8、10、14カ月の4タイムポイントでDDYマウスの下顎骨、大腿骨のコラーゲン量、翻訳後修飾であるリシン残基の水酸化量の分析を行った。コラーゲン量については、下顎骨、大腿骨どちらにおいても加齢による有意な変化は認められなかった。しかし、いずれのタイムポイントにおいても、下顎骨で大腿骨より高い値を示した。これは、下顎骨での特異性の一つと考えられるかもしれない。リシン残基の水酸化量は月齢間、下顎骨-大腿骨間で有意な差は認められなかった。この結果より、下顎骨では老化によりコラーゲンの量、リシン残基の水酸化量に変化がないこと、また下顎骨では大腿骨と比較して有意差はないものの低いリシン残基の水酸化、コラーゲンの量の増加の傾向があることが示された。
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