研究課題/領域番号 |
23H00240
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分26:材料工学およびその関連分野
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研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
赤松 謙祐 甲南大学, フロンティアサイエンス学部, 教授 (60322202)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
44,200千円 (直接経費: 34,000千円、間接経費: 10,200千円)
2024年度: 15,210千円 (直接経費: 11,700千円、間接経費: 3,510千円)
2023年度: 15,080千円 (直接経費: 11,600千円、間接経費: 3,480千円)
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キーワード | 電気めっき / 薄膜 / 高分子電解質膜 / 電解質膜 / 固相電析 / イオン輸送 / 高分子電解質 / 金属薄膜 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究課題では、申請者が独自に開発した「固体高分子電解質を介したイオン輸送によるめっき法」を基盤技術として用い、「固(電解質膜)-液(電解液)界面におけるイオンの輸送過程を理論的・実験的に解析し、反応メカニズムを明らかにする。これにより、次世代の「廃液フリー超高速めっきシステム」の実現に向けた化学的アプローチを提案するとともに、省エネルギー性に優れた次世代回路基板製造への応用可能性を開拓する。
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研究実績の概要 |
本研究では、固体電解質膜をイオン輸送層とし、廃液を産生しないめっきプロセス(Solid electrodeposition:SED)のメカニズム解析を行う。SED法では、セルに導入した硫酸銅水溶液から電解質膜に銅イオンがペネトレーションし、電解質膜とカソード銅板との界面において還元反応が起こることによって電析が進行する。初年度である今年度は、高分子電解質と電解質溶液の界面に、表面露出したスルホ基と銅イオンが吸着平衡を示す界面層を導入し、本モデルに基づいて定電圧電解における電解質フィルム内の銅イオン濃度変化を表す反応速度式を立案した。得られた反応速度式より、4次精度Runge-Kutta法による数値解析により、銅イオン濃度の時間変化が得られ、これより電流密度を得た。 本モデルを用いて電解質膜へのイオンのペネトレーションおよびめっき時の析出挙動を解析した結果、SEDプロセスにおいては、電解質溶液から電解質膜へのイオンペネトレーションが律速であり、めっき速度とペネトレーション速度が釣り合う点において系が定常状態となることが示唆された。また、電解質膜とアノード間に電解液層を導入したところ、アノードを膜に接触させた系(サンドイッチ系)に比較して、定常電流密度は増大したが、電解液層の厚みの増大とともに減少し、約1000マイクロメートルを超えた時点でサンドイッチ系の電流密度を下回った。このことから、アノードは、電解液層の対流を妨げない程度に電解質膜に近接させた方が、大きなイオンペネトレーション速度が得られ、高い電流密度が実現できることが明らかとなり、高速めっき実現のためのセル構造の設計指針を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究初年度である本年度は、アノード間に電解質膜と電解液層の2層を導入した電極系を扱い、反応モデルを構築し数値解析による反応速度解析を行った。計画全体の目標である「異相界面でのイオン輸送ダイナミクスの解明」における初年度目標であった「反応速度定数の算出」については達成することができ、所定の温度および濃度における定常電流密度が予測可能となった意義は大きい。また、電圧印加中の電解質膜中のイオン濃度を吸収スペクトルから定量する実験系の構築を行い、電流ー時間曲線と同時に濃度変化をIn Situ評価できる装置を作製し、電流密度と実測した濃度変化を対応させる系も構築することができた。以上より、現時点では研究は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後はさらなる理論的裏付けとして、めっき反応中の各電極の電極電位の変化を実測し、電気化学的に反応速度を解析することでイオン輸送ダイナミクスに関する記述の妥当性を検証する。具体的には、電解質膜中に極小白金電極を参照極として挿入し、電極と固体電解質膜間に生じる自然電位および通電中の電極電位の時間依存性を評価し、これを従来の電気化学系(電極と溶液の界面での反応)と比較検証することで、固-固界面における還元反応速度を特徴づける因子(電解質膜内のイオン交換基密度やイオンの安定度定数)を明確化する。 また、電圧、温度、電解質膜および電解液層の厚み等の個々のパラメータを変化させ、電流ー時間曲線に与えるそれぞれの寄与度を網羅的に検討し、電流を制御する主因子パラメータを明確化する。これにより、本系における電流の制御性に関する知見を得るとともに、10 マイクロメートル/min以上の超高速析出を実現することを目指す。
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