研究課題/領域番号 |
23H05437
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研究種目 |
基盤研究(S)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
大区分B
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
佐伯 修 九州大学, マス・フォア・インダストリ研究所, 教授 (30201510)
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研究分担者 |
大本 亨 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (20264400)
鎌田 聖一 大阪大学, 大学院理学研究科, 教授 (60254380)
古宇田 悠哉 慶應義塾大学, 経済学部(日吉), 教授 (20525167)
粕谷 直彦 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (70757765)
片長 敦子 岩手大学, 教育学部, 准教授 (20373128)
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研究期間 (年度) |
2023-04-12 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
101,920千円 (直接経費: 78,400千円、間接経費: 23,520千円)
2024年度: 20,020千円 (直接経費: 15,400千円、間接経費: 4,620千円)
2023年度: 21,840千円 (直接経費: 16,800千円、間接経費: 5,040千円)
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キーワード | 写像の特異点論 / 幾何的トポロジー / 多様体 / 幾何構造 / 次世代カタストロフ理論 / Reeb空間 / Reebグラフ / スペシャル・ジェネリック写像 / ホモトピー球面 / Gromollフィルトレーション / Reeb complement / 多重次元Reebグラフ |
研究開始時の研究の概要 |
近年,幾何構造を本質的に取り入れることで,幾何的トポロジーにおいて著しく重要で斬新な結果が多数得られている.本研究では,そうした強力な幾何的アイデアを写像の特異点論に持ち込み,既存の概念・定式化・手法を革新し,特に大域的特異点論の飛躍的発展を図る.また,逆に幾何的トポロジーに特異点論から新しい道を切り開き,重要な諸問題の解決を図る.さらにそうした革新的研究によって新研究領域を創成し,数学イノベーションを通して社会に大きく貢献する.
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研究実績の概要 |
本研究では、強力な幾何的トポロジーのアイデアを写像の特異点論に持ち込み、既存の概念・定式化・手法を革新し、特に大域的特異点論の飛躍的発展を図る。また逆に、幾何的トポロジーに特異点論から新しい道を切り開き、重要な諸問題の解決を図る。さらにそうした革新的研究で新研究領域を創成し、数学イノベーションを通して社会に貢献することが目的である。 そのため令和5年度は、まず、コンパクト多様体上に可微分関数が与えられたとき、そのReeb空間が有限グラフの構造を持つための必要十分条件を、レベル集合の各連結成分がその近傍をどのように切断するかという観点から与えることに成功した。ここでReeb空間とは、レベル集合の連結成分全体のなす空間である。これまで多くの場合にグラフ構造を持つことは知られていたが、その完全な特徴づけが得られた意義は大きい。さらに、ホモトピー球面上のある種の標準的なスペシャル・ジェネリック写像の存在について調べ、そうした写像の存在によって定義されるホモトピー球面のなす群のフィルトレーションが、実はGromollフィルトレーションと完全に一致することを示した。このことは、スペシャル・ジェネリック写像のクラスがホモトピー球面の微分構造の観点から極めて自然なものであることも示唆している。応用面では、3次元多様体上に2つの実数値関数が与えられたとき、それらのレベル集合の位置関係を記述する際の基礎となる概念としてReeb complementという数学的対象を初めて定義し、具体的なデータに対してそれを求めるアルゴリズムの開発に着手した。また、3次元多様体上に2つの区分的線形関数が平面への写像として与えられたとき、そのReeb空間を多重次元Reebグラフを用いて求めることができることを数学的に証明し、与えられたデータに対してそれを求めるアルゴリズムの開発をある程度完了させた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、幾何的アイデアと特異点論的考え方を融合させて、新たな研究領域を創出することが目的である。Reeb空間は、特異点を持つ写像に対して、幾何的アイデアを用いて定義される対象であるが、これが可微分関数の場合はどのような条件下でグラフ構造を持つのかがはっきりしておらず、その応用範囲が明確でなかった。そこで令和5年度は、それがグラフ構造を持つための必要十分条件を求めることに成功した。このことは、本研究が順調に進んでいることを意味する。我々はさらに、スペシャル・ジェネリック写像という特異点論の対象を幾何的トポロジーの手法を用いて考察し、そういった写像が、ホモトピー球面の可微分構造という幾何的構造に本質的に関係していることを、Gromollフィルトレーションを通して明らかにした。これらは、特異写像が幾何的トポロジーと密接に関わっていることを如実に表しており、これにより本研究が今後さらなる発展を見せることが期待できるような、基本的な結果であると言える。さらには、実データの解析や可視化への応用も見据えた研究も、新たな概念の数学的定式化に成功するなど、かなり進展した。以上のことから、本研究課題はおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後も、特異ファイバー理論、幾何構造論、写像類群、手術理論といった幾何的トポロジーに基づいた独創的観点・具体的手法に基づき研究を進めてゆく。その際、分担者や研究協力者を含めてチームとして緊密な連絡を取りながら研究を進めてゆく。なお,種々の詳細な議論や計算補助のために引き続き研究協力者(PD1名、RA1名程度)を雇用する。多様体の構造と写像の特異点については、特異値の逆像として現れる特異ファイバーに着目し、多様体の構造との関係について調べてゆく。特に4次元の場合、ゲージ理論の種々の対象が特異ファイバーを通してどのように解釈できるのかについて調べる。特異Lefschetz束構造の変形理論については、変形操作を完全なものとし、特異シンプレクティック構造の変形も明らかにして、4次元多様体の新たな不変量構築を目指す。こうした研究には豊富な具体例も必要であり、写像の構成論を効果的に用いて研究を進める。写像類群と特異写像の研究については、曲面の写像類群を特異Lefschetz束等の特異写像の記述に用い、定義域多様体との関連を詳しく調べる。特に、退化した特異ファイバーを摂動したときに現れる非特異ファイバーの記述に写像類群が本質的役割を果たすことが期待される。多様体の同境理論に基づいた不変量の定式化については、球面から普遍トム空間とそのゼロ切断のなす空間対への写像に対して有限型不変量を定義することを目指す。そのためには、空間対への写像の特異点やその変形の分類が必要であり、その研究に着手する。実多項式写像芽の理論と可微分4次元Poincare予想については、実多項式写像でMilnorファイバーが可縮多様体となる例を組織的に構成し、その特異点から得られる不変量を調べ上げるほか、結び目同境との関連も調べる。諸科学分野への応用については、データ可視化、多目的最適化に特異点論の最新の成果を応用する。
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