研究課題/領域番号 |
23K06667
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分50010:腫瘍生物学関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
大塩 貴子 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 助教 (80723238)
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研究分担者 |
園下 将大 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 教授 (80511857)
野田 展生 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 教授 (40396297)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 膵がん / ショウジョウバエ / オートファジー / モデルハエ / 新規治療法開発 |
研究開始時の研究の概要 |
膵がんは予後の悪い代表的な難治がんであり、その新規治療法の開発は重要な福祉課題である。その解決のため、申請者らは膵がん患者の中でも最も予後が悪い患者群で観察される4遺伝子変異を模倣した初の動物モデル、4-hitハエの作出に成功した。そのハエを用いた遺伝学的解析より、申請者はそのハエの悪性形質をオートファジーが促進することを見出した。そこで本研究では、個体レベルでのスクリーニングによりオートファジー阻害剤と他の化合物を組み合わせた新規治療法を創出し、その作用機序を解明する。また、オートファジー活性の定量化を可能にする新たなプローブハエを樹立し、各種オートファジー阻害剤の個体内での効果を検証する。
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研究実績の概要 |
膵がんは、種々のがんの中で最も予後が悪い代表的な難治がんであり、今後も患者の増加が予測されている。しかし、その有効な治療法はほとんど存在しない。そこで申請者らは膵がんに対する新規治療法を開発するために、その遺伝子型を模倣したモデルショウジョウバエ(4-hitハエ)を作出した。このハエを用いた遺伝学および化合物スクリーニングにより、申請者らは膵がんの新規治療標的候補や治療薬候補の同定に成功してきた。さらに申請者は、そのハエを用いた遺伝学的解析により、オートファジーに関わる遺伝子のいくつかがそのハエの生存率の低下を促進することを見出した。そこで、本年度は、これまでに報告されているオートファジー関連遺伝子の中で4-hitハエの悪性形質に関わる遺伝子が他にも存在するかを明らかにするために、ショウジョウバエのストックセンターよりこれまでに報告されているオートファジー関連遺伝子に対するノックアウトやノックダウン系統のハエを取り寄せた。そして、それらのハエを4-hitハエと交配して生存率を検討するために、購入したハエのバランサーを適切なものに変更する作業を行った。全ての系統においてその操作が終了したため、今後4-hitハエを用いた遺伝学解析を行う予定である。 また、これまでに報告されいてるオートファジーを抑制する化合物のスクリーニングを行うために、種々の化合物を購入した。それらの化合物のショウジョウバエでの最大耐量を明らかにするために、野生型のハエにその化合物を混入した餌を食べさせて、生存率が低下しない濃度を調べた。一部の化合物においては最大耐量が決定したが、ほとんどが検討した最大量でも生存率に影響はなく、さらに高濃度での検討が必要である。購入した化合物はDMSOや水に溶解しにくいものも多くあり、その溶媒についても今後検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
マラリアの予防薬として利用されいてるクロロキンはオートファジーを阻害することが知られており、安価に購入できる。一方、他にもオートファジー阻害剤は培養細胞や酵母のスクリーニングによって多数報告されているが、高価なものも多い。そこで、ハエを用いた化合物スクリーニングに用いる化合物の量を節約するために、ハエの実験をこれまでよりも小さなスケールで行えないかを検討した。そして、小さなバイアルに少量の餌を加え、生存率を今までのスケールと同じように判定できる条件を見出した。その結果、これまで1回の実験で必要な餌の量が8 mLであったが、現在の方法では1.5 mLで可能となり、必要な化合物の量も2割以下に節約できる。この検討に時間を要したため、化合物スクリーニングを迅速に進めることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度に準備を行ったオートファジー関連遺伝子に対するノックアウトおよびノックダウン系統のハエを用いて、4-hitハエでの遺伝学スクリーニングを実施する。そして、申請者がこれまでに発見したオートファジー関連遺伝子以外にも、膵がんの治療標的として有望なものがあるかを明らかにする。より有望なものが見つかれば、そのタンパク質の機能を阻害するペプチドや化合物の阻害剤の作出を検討する。 さらに、今年度に確立したスモールスケールでのハエの培養条件を利用し、オートファジー阻害剤をより高濃度に餌に混ぜ込み、ハエの生存率に影響を与えない最大耐量を同定する。そして、その濃度の餌を4-hitハエに経口投与し、生存率を上昇させる膵がんの治療薬候補を同定する。
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