研究課題
基盤研究(C)
糖尿病の代表的な合併症である糖尿病性腎症の発症と増悪には、グリセルアルデヒド由来の終末糖化産物(GLA-AGEs)が関与している。しかしながら、複数の反応を経て生じるGLA-AGEsの修飾構造の実体と、受容体RAGEを介した生体作用については、不明な点が多い。そこでGLA-AGEsを構成する修飾体であるMG-H1、GLAP、APNに結合し、その作用を阻害する核酸医薬品であるDNAアプタマー(標的と特異的に結合する一本鎖DNA)を作成し、糖尿病モデル動物における腎症の抑制効果を検討する。本研究により、糖尿病性腎症の新規治療法が開発されると期待される。
本年度はMG-H1またはアルグピリミジン(APN)に結合するアプタマーの作製をSELEX(試験管内進化法)によりおこなった。樹脂にMG-H1またはAPNを固定後、ランダム配列のオリゴDNAライブラリから、MG-H1またはAPNに結合した画分を得た。樹脂から溶出したオリゴDNA (約100個)を、Mg2+とDMSO存在下の変異誘発条件でPCRをおこなった。PCRの際に、ヌクレオチドのアデニンとチミンはDNase耐性を有するホスホロチオエート型ヌクレオチドを用いた。再度MG-H1またはAPN固定樹脂に結合する画分を得た。固定樹脂に結合ー溶出ーPCRのサイクルをMG-H1およびAPNのそれぞれで7-10サイクルおこない、最終的に80-100個のオリゴDNAを得た。この中からRAGEとMG-H1またはAPNとの結合を阻害するものを、RAGEを固相化したELISA法により絞り込んだが、いずれも阻害効果は約10-15%程度にとどまった。また、阻害効果を示したオリゴDNAの数も3-7個程度と少なかった。そこで、オリゴDNAの作製条件について、PCR条件の検討をおこない、再度セレクションを実施した。樹脂にMG-H1あるいはAPNを固定化する際のリンカー試薬の変更も検討をおこなった。最終的に、MG-H1またはAPNとRAGEとの結合阻害を20-40%程度阻害したオリゴDNAをそれぞれ10個前後得た。現在、培養腎メサンギウム細胞を用い、MG-H1またはAPNによる酸化ストレス産生や細胞増殖に対する各オリゴDNA候補を用いた抑制効果について解析をおこなっている。また、MG-H1、APN刺激時の炎症反応に関わる遺伝子発現と酸化ストレスに関わる酵素遺伝子についてもリアルタイムPCR法による検討をおこなっている。
3: やや遅れている
MG-H1およびAPNとRAGEの結合を阻害するアプタマーの候補数が少なく、阻害効果も低かったため、作成方法の再検討により遅れが生じた。最終的には十分と思われる効果のアプタマーが得られた。また、培養細胞を用いたアプタマーの効果の確認は実施中であるため、やや遅れている。
培養細胞を用いたin vitroにおけるアプタマーによるMG-H1またはAPNの阻害効果の検討を、本年度に得られた候補アプタマーを用いて引き続きおこなう。In vitroにおける阻害効果が確認できない場合には、候補アプタマーの再取得を速やかに実施する。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件)
Molecules
巻: 29 号: 1 ページ: 198-198
10.3390/molecules29010198
Biomedicines
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10.3390/ijms24076505