研究課題/領域番号 |
23K17349
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研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分28:ナノマイクロ科学およびその関連分野
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
寺嵜 亨 九州大学, 理学研究院, 教授 (60222147)
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研究分担者 |
堀尾 琢哉 九州大学, 理学研究院, 准教授 (40443022)
荒川 雅 九州大学, 理学研究院, 助教 (10610264)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
26,000千円 (直接経費: 20,000千円、間接経費: 6,000千円)
2027年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2026年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2025年度: 4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
2024年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2023年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
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キーワード | ナノ物質科学 / クラスター / 超原子 / 気相化学 / 液相化学 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、原子分子クラスターの中でも、物質の新たな構成要素となる可能性をもつ「超原子」に着目し、超原子クラスターが組織的に集積した「クラスターマテリアル」の創製およびその物性科学を推進する。特に、マテリアル創製において気相・液相の科学を融合した新たな方法論を開拓し、新規ナノ物質の創製に取り組む。一方、光や電子による先端的な分析技術で、構造解析と物性評価に取り組む。以上により、クラスターを基盤とする新たな物質設計論を構築し、ナノ物質科学を新展開に導く。
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研究実績の概要 |
本年度は、液相技術の開拓を中心に研究に取り組んだ。真空中への液体導入は容易ではないが、我々は、直径数十ミクロンの液滴をピエゾ駆動ノズルでオンデマンド発生する独自の技術を有しており、それに基づいて実験研究を展開した。真空中に特有の急速な蒸発冷却効果のために、純水の液滴は10 ms程度の短時間で凍結するが、微量のポリオールを混合すると凍結が遅延することを見出し、この現象を系統的に調べる実験をまず行った。ポリオールとして、エチレングリコール(OH基2個)、グリセロール(同3個)、キシリトール(同5個)の3種を取り上げて水に混合した結果、凍結の遅延時間は、これら溶質の分子種には依らず、むしろモル分率にのみ依存することを見出した。つまり、OH基近傍ばかりでなく、溶質周囲の水素結合ネットワークの乱れが凍結を阻害するとの仮説に至った。さらに、過冷却状態の液体の物性研究として、発生直後の液滴の形状変化を超高速カメラで追跡する実験に取り組み、四重極振動の周期と減衰時間から表面張力と粘度を評価するなど、新たな知見を得た。 一方で、ポリオール添加による凍結遅延のメカニズムの解明に分子動力学シミュレーションの手法を取り入れて、理論面からも研究を推進した。まず、純水の均質凍結核生成速度の評価に取り組み、既報値をおよそ再現する結果を得た。さらに、エチレングリコール混合系のシミュレーションを開始し、凍結核生成速度の増大が純水の場合よりもさらに低温領域で起きる様子が確認され、定性的な傾向が再現された。 他方、気相技術の開拓に関して、Agをホストとするクラスターに加え、CuおよびAlのクラスターにも研究対象を拡張し、光解離分光、光電子画像分光による電子構造解析を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
真空中での液相化学の開拓を目指す本研究において、急激な蒸発冷却が支配的な真空中においても凍結せずに液相を保つ液滴の調製が重要な技術開発の一つであり、その実現への基盤となる基礎研究を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、真空中で液体を扱う技術の開発を実験・理論の両面から推進するとともに、液相に導入すべき特徴的な気相クラスターの生成と特性評価を進める。さらに、気相クラスターの液相導入に向けた実験の準備を進めてゆく。
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