研究課題/領域番号 |
23K17399
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研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分44:細胞レベルから個体レベルの生物学およびその関連分野
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
藤田 知道 北海道大学, 理学研究院, 教授 (50322631)
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研究分担者 |
日渡 祐二 宮城大学, 食産業学群, 教授 (10373193)
久米 篤 九州大学, 農学研究院, 教授 (20325492)
蒲池 浩之 富山大学, 学術研究部理学系, 准教授 (40262498)
唐原 一郎 富山大学, 学術研究部理学系, 教授 (60283058)
藤原 徹 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (80242163)
富田 祐子 (半場祐子) 京都工芸繊維大学, 応用生物学系, 教授 (90314666)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
26,000千円 (直接経費: 20,000千円、間接経費: 6,000千円)
2026年度: 6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2025年度: 6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2024年度: 6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2023年度: 7,280千円 (直接経費: 5,600千円、間接経費: 1,680千円)
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キーワード | ヒメツリガネゴケ / 光合成 / トレードオフ / レゴリス / 風化 / スペース・モス / テラフォーミング |
研究開始時の研究の概要 |
人類の宇宙居住を実現するために植物の力を借り、宇宙農業や地球化(テラフォーミング)を実現し循環型生活を構築することを目指す。このため本研究は、パイオニア植物でもあるコケ植物に着目し研究を進め、厳しい宇宙環境でも力強く成長を続けるコケ植物(スペース・モス)の創出を目指す。極限環境でも成長できるスペース・モスの開発は地上の緑化や生態系回復などの地球の環境修復にも役立つはずである。
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研究実績の概要 |
本研究では、宇宙という極限環境で植物がどのように育つのかをコケ植物の特性(小型パイオニア植物、強い生命力等)に注目して研究し、そのような環境ストレスに耐えながらも成長を続けるための分子基盤の解明を目指す。そして植物の極限環境への適応能力を最大限に引き出し、その仕組みを理解するための基礎研究を実施しながら、月や火星のテラフォーミングにも適したコケ植物(=スペース・モス)の創出も目的とする。コケ植物は種子植物とも共通点が多く、宇宙環境に緑や土壌を育もうとするテラフォーミングを目指した本研究は、現在、世界中で顕在化している地球上での環境悪化、食糧不足などを食い止め改善するための新しいアイデアや革新的な陸上植物利用技術を開拓する研究にもなる。 初年度、本研究ではモデルコケ植物(ヒメツリガネゴケ)を用い、次の3つの課題を開始した。 【課題1】光合成活性と成長を促進するスペース・モスの分子基盤の理解と開発:これまでに過重力に応答して光合成活性と成長を促進するAP2転写因子を同定しており、その作用機序を詳細に調べるため、多重遺伝子破壊株や遺伝子産物の局在を調べるための変異体の作成を進めた。 【課題2】ストレスに耐えながらも成長するスペース・モスの分子基盤の理解と開発:ストレス応答と成長のトレードオフの関係を打破する仕組みを変異体スクリーニングにより明らかにすることを目指した。 このための変異体スクリーニングを進めた。 【課題3】風化を促進し土壌を生成するスペース・モスの分子基盤の理解と開発:月や火星模擬レゴリスでよく育つ変異体コケ植物をスクリーニングするための予備実験を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的に添い、初年度において計画していた3つの課題をそれぞれ開始することができた。研究にはモデルコケ植物であるヒメツリガネゴケを用い実施した。 【課題1】光合成活性と成長を促進するスペース・モスの分子基盤の理解と開発:すでに過重力に応答して光合成活性と成長を促進するAP2転写因子を同定してきた。初年度はその作用機序を調べるため、多重遺伝子破壊株の作成を進め、遺伝子産物の局在を調べるため蛍光タンパク質ノックイン体の作成を進めた。いずれも完成に向け作業を前進させた。また得られた変異体等を用い、微小重力(宇宙ステーション内)、低重力(月1/6G, 火星1/3G)などの重力環境における成長の様子を調べるために必要な軌道調節型3D-クリノスタットの開発も進めた。 【課題2】ストレスに耐えながらも成長するスペース・モスの分子基盤の理解と開発:ストレス応答と成長のトレードオフの関係を打破する仕組みを変異体スクリーニングにより明らかにすることを目指した。 このための変異体スクリーニングを進め、2年目にその原因遺伝子を探索するための準備をほぼ整えることができた。 【課題3】風化を促進し土壌を生成するスペース・モスの分子基盤の理解と開発:月や火星模擬レゴリスでよく育つ変異体コケ植物をスクリーニングするための予備実験を進めた。そのために月模擬レゴリス、火星模擬レゴリスでヒメツリガネゴケの栽培条件を模索した。月模擬レゴリスでのヒメツリガネゴケの生育は極めて悪く、引き続き更に条件検討を重ね改善する余地があることがわかった。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きヒメツリガネゴケを用い、2年度目もほぼ当初計画どおりに研究を進める。そのため予定していた3つの課題をそれぞれ推進する。 【課題1】光合成活性と成長を促進するスペース・モスの分子基盤の理解と開発:初年度に引き続き、重力の変化時の成長の鍵を握る転写因子の1つとして同定したAP2転写因子の作用機序を調べる。このため、多重遺伝子破壊株の作成を進め、遺伝子産物の局在も調べる。得られた変異体等を用い、微小重力(宇宙ステーション内)、低重力(月1/6G, 火星1/3G)などの重力環境における成長や遺伝子発現変動の様子を調べる。このために軌道調節型3D-クリノスタットの開発を完成し用いる。こうして宇宙環境でも成長が促進されるスペース・モス1号の開発を進める。 【課題2】ストレスに耐えながらも成長するスペース・モスの分子基盤の理解と開発:ストレス応答と成長のトレードオフの関係を打破する仕組みを明らかにするための変異体スクリーニングを完了し、その原因遺伝子の探索を開始する。最終的には得られた変異体の中で最も宇宙環境ストレスに強くかつ成長できるコケ植物をスペース・モス2号とする。 【課題3】風化を促進し土壌を生成するスペース・モスの分子基盤の理解と開発:月や火星模擬レゴリスでよく育つ変異体コケ植物をスクリーニングするためのヒメツリガネゴケのスクリーニング条件(レゴリスでの生育条件、紫外線による変異誘発条件など)を確立しスクリーニングを開始する。そして風化を促進できる分子制御機構を明らかにし、風化能力に優れたスペース・モス3号の単離を目指す。 以上より得られたスペース・モス1, 2, 3号や他の知見から有望だと考えられる遺伝子を組合わせたヒメツリガネゴケも新たに作出し、これらの中で最も宇宙環境での生育に適したヒメツリガネゴケ(スーパー・スペース・モス)の創出に挑む。
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