インドにおいて成立した観音(観自在)菩薩信仰が、チベットにおいてどのように受容され変容したのかを、14世紀後半に学僧ソナム・ゲルツェンによって著された『王統明鏡史』と、15-16 世紀初頭までに成立した『摩尼十万語』を中心に考察する。本研究では、これらの文献を、説話文学的側面、宗教実践的側面、図像学的側面、宗教思想的側面から取り上げ、どのように観音信仰がチベット仏教に受容され、変容したのかという点について多角的に考察する。それによって、アジアの仏教文化圏に広がった観音信仰という宗教現象の中で、チベット仏教における観音信仰がどのような特色を有するのかという点について解明する。
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