研究課題/領域番号 |
23K22051
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補助金の研究課題番号 |
22H00779 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05010:基礎法学関連
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
松村 良之 明治大学, 研究・知財戦略機構(駿河台), 研究推進員 (80091502)
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研究分担者 |
木下 麻奈子 同志社大学, 法学部, 教授 (00281171)
今井 猛嘉 法政大学, 法務研究科, 教授 (50203295)
遠山 純弘 法政大学, 法務研究科, 教授 (70305895)
長谷川 晃 北海道大学, 法学研究科, 名誉教授 (90164813)
坂本 忠久 東北大学, 法学研究科, 教授 (60241931)
前田 智彦 名城大学, 法学部, 教授 (10292806)
森 大輔 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(法), 准教授 (40436499)
高橋 脩一 専修大学, 法学部, 准教授 (80749614)
綿村 英一郎 大阪大学, 大学院人間科学研究科, 准教授 (50732989)
村山 眞維 明治大学, 研究・知財戦略機構(駿河台), 研究推進員 (30157804)
林 美春 千葉大学, 大学院社会科学研究院, 助手 (50292660)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
10,660千円 (直接経費: 8,200千円、間接経費: 2,460千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2023年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2022年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | 所有権 / 情報財 / 民法 / シナリオ実験 / 公正の心理学 / 私的財 / 公共財 / 共同消費性 / 法態度 / 法意識 / 占有 / 所持 / 契約 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、(i)所有・所有権に対する日本人の意識を「法態度」という概念を手掛かりに明らかにし、(ii)そこで得られた人々の心理・行動特性をもとに、所有権制度の再構成に資することを目指す.すなわち、①新たに開発した尺度を用いて、所有・所有権に対する法態度の構造を明らかにし、所有権を侵害する行動意図に影響を与える認知、感情等の要因について、シナリオ実験を用いて測定する.②法心理学の立場から、所有・所有権の本質が何であるかを明らかにする.③①の目的のために、多次元項目反応理論等を用いて「所有・所有権の法態度」を測定するための、心理測定尺度を作成する.
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研究実績の概要 |
実査班と法学法理論班との検討の結果、近代所有権法と対比するに当たって、人々の「素朴法律学」の研究対象としては、①所有権の主体(誰が所有権者となれるのか)、②所有権の内容(絶対性があるか)③所有と占有の分離の3点が重要であることがわかった。 ③について。日本文化会議の複数の調査によれば、日本人は、契約対しては柔軟な態度をとっているのに、所有権に対しては比較的厳格な態度をとっている。松村はこの問題について、要因計画法に基づくシナリオ実験を行っているが、その再分析を行った。再分析の結果によれば、(i)所有権はそれなりに尊重されている。(ii)立て札・柵がない場合は、空き地利用を許容すべきとされる程度が共同体の外にいる所有者で大きくなっている。日本人は所有と占有の分離をある程度理解していて、所有権者が立て札・柵で自己の所有権を示すこと、つまり所有権の対外的な公示が重要あることが見いだせた。 ①については、誰が所有権を有することができるかをWeb調査で探求した。この問題は一方で共同所有の問題と関連し、他方でAIの進化に伴う、所有像の変化と結びつく重要な問題であることが判明した。 ②については、入会権に典型的に見られる権利の行使の限界、共同利用による制約と関わる問題であるが、この問題をミクロ経済学の観点から再構成した。そのうえで、公共経済学で言う排除可能性と共同消費性の有無に関わる操作変数を用いて一般人に対してシナリオ実験を遂行した。結果は現在分析中である。 また、所有感覚のなさと経済的不安が逸脱者に対する態度にどのような影響を及ぼすのかを社会心理学の枠組みを用いて、Web調査で検証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」で述べたように、上記①については、近代以前の所有権という回顧的な問題にとどまるものではなく、AIのような無生物の所有能力を構想する上でも大きな手がかりとなることがわかった。②については、所有権の絶対性、完全性を、公共経済学の枠組みと概念で捉え直すことにより、歴史的な問題ではなく、より普遍的な、法学的・社会的な問題として議論できることがわかった。③については、所有と占有の分離の根幹が「素人理論」の中では、所有権があることを示す外部から認識可能な明認方法の有無にあることがわかった。つまり、絶対性、完全性、抽象性を備えた近代法の所有権概念は、現実社会のものとは大きく異なっているのではないかという知見が得たれたということである。
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今後の研究の推進方策 |
「現在までの進捗状況」で述べた知見を踏まえた上で、共同消費性の有無、排除不可能性の有無という基準によりつつ、公共経済学の枠組みで問題を問題を厳密に再構成したうえで、24年度に予定されているWeb調査のリサーチデザイン、操作変数などを確定し、実査を行う予定である。さらに、所有と占有の分離については、法律学的な比喩で言えば、「明認方法」の有無を手がかりに、別のWeb調査に依りつつ、「素人理論」を明らかにする。その際、所有権の主体(何が所有権の主体となり得るのか。人に加えて、組織自体、無生物ーーー例えばペット---、ロボット、AI)についての設問も取り込む。その知見は、近代法以前の問題ではなく、組織、AIなどの所有能力をどう考えるかという将来的な法学上の重要な問題に関わる。
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