研究課題/領域番号 |
23K22924
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補助金の研究課題番号 |
22H01654 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分23020:建築環境および建築設備関連
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
吉澤 望 東京理科大学, 創域理工学部建築学科, 教授 (40349832)
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研究分担者 |
宗方 淳 千葉大学, 大学院工学研究院, 教授 (80323517)
三木 保弘 国立研究開発法人建築研究所, 環境研究グループ, グループ長 (90356014)
加藤 未佳 日本大学, 生産工学部, 教授 (00409054)
山口 秀樹 国土技術政策総合研究所, 建築研究部, 室長 (60411229)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,680千円 (直接経費: 13,600千円、間接経費: 4,080千円)
2024年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2023年度: 6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2022年度: 8,320千円 (直接経費: 6,400千円、間接経費: 1,920千円)
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キーワード | 眺望 / 採光 / 窓 / 眺望性評価指標 / 環境基準 / 視環境 / 窓のもたらす光環境 / 開放感 / 昼光照明シミュレーション |
研究開始時の研究の概要 |
窓の機能を向上させることはSDGsやZEB普及を推進していく上で重要であり、視環境的側面からは眺望・採光双方の性能に留意する必要がある。従来は昼光照度や昼光率といった採光量指標によって窓の形態等を規定してきたが、現在の採光量指標は担保できる視環境が不明瞭であり、採光量指標のみに頼った窓設計では、本来窓に要求される性能がむしろ阻害される懸念がある。そこで本研究では、1)眺望・採光の関係性を改めて整理して窓がもたらす視環境の評価構造を解明し、2)眺望性能の定量的評価方法を明らかにし、最後に3)窓の視環境的側面を一元的に評価可能な実用的かつ簡易な眺望性能指標の導出とその目標値の提案を行なった。
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研究実績の概要 |
オフィスにおける眺望・採光性評価実態を把握するために、実オフィス2件(関東・関西各1件)における長期実測調査(2週間)および執務者対象アンケートを実施した。年間を通した眺望と採光に対する執務者評価とシミュレーションから求めた物理量(眼前照度等)の対応を確認すると同時に、眺望・採光を含む窓がもたらす光環境に対する評価構造を共分散構造分析をもとに明らかにした。さらに、2022年度得られたデータと以前実施した実オフィス3件における同様の調査の結果と合わせて解析を進めている。 実オフィス3件における被験者実験(学生被験者)を実施し、眺望性を説明可能な物理指標(総合可視容積など)の検討を行うとともに、眺望・採光を含む窓がもたらす光環境に対する評価構造を明らかにした。 住宅居住者やオフィス執務者が実際の体験に基づいて窓の大きさや窓の存在自体がもたらす評価を把握するため,Web調査アンケートならびに大学生を対象としたアンケートを実施した。ここでは,自身の住宅やオフィスの窓の評価に加えて,その窓の状態が変化した状況を想定した質問にも回答させた。結果として,住宅やオフィスの窓の大きさや存在がもたらす評価に関する傾向を得ると同時に、眺望の評価に影響を及ぼす物理量の検証を行なった。 天窓の開放感に関する実験を実施し,大きさや天井高や窓面輝度を変化させた状況の開放感を被験者に評価させた。その結果,天窓のもたらす開放感の傾向の知見を得た。 窓のもたらす価値とは,窓の外にある眺望を見る,つまり窓面よりも遠くにある視覚的刺激からもたらさせるという状態であることを検証するため,実際の窓に対する印象と窓面に窓外の眺望を印刷したフィルムに対する印象を被験者に評価させた。その結果,室内作業のタイプや主観印象におけるこれらの違いに関する知見を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度後期に計画していた第1期オフィス調査は、実オフィス2件において2022年7月および10月に長期実測を実施し、さらに7月から10月にかけて計3箇所で、統制的な被験者実験を行なった。後者は当初は2023年度後期に想定していた統制実験となるもので、2022年度中に実オフィス(空きオフィス)での被験者実験が可能となったため、被験者実験を実施した。統制実験としては、当初予定していた人工天空実験室実験に代わり、窓面に窓外の眺望を印刷したフィルムに対する印象を評価させる被験者実験も実施し、室内作業のタイプや主観印象におけるこれらの違いに関する知見を得た。さらに当初2023年度に予定していたWeb調査アンケートを2022年度に前倒しで実施し住宅やオフィスの窓の大きさや存在がもたらす評価に関する傾向を得ることができた。視環境評価構造の導出も、上記実オフィス2件の長期実測および実オフィス3件の被験者実験から得られたデータを元に行うことができ、また眺望性指標の導出も実オフィス3件の被験者実験のデータをもとに進めている。以上より、2022年度後期に予定したい第1期人工天空実験室実験については予定を変更したものの、現場調査・解析ともにほぼ順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は引き続き実オフィスにおける長期実測調査を実施する予定で、既に実オフィス2件については了解を得ており、実測計画調整中(1件は北陸7月末に実施予定、もう1件は都内のフリーアドレス型オフィスで10月過ぎに実施予定)である。 窓面の眺望の条件が室内の開放感にもたらす影響の知見の蓄積のため、当初予定していた人工天空実験室における被験者実験の代わりに、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)を用いたVR実験を行う予定で準備を進めている。これは模型実験よりもより多様な眺望環境(窓形状・窓装備の種類、屋外障害物の種類や距離など)を提示可能なこと、HMDを用いた窓のある空間の開放感評価の妥当性に関する知見が得られたこと、による。 統制実験による検証としては、天窓の開放感を予測するモデルと構築すべく,模型実験を推進する。さらに実際の窓を見るという行為における注視の状況と在室者に及ぼす影響を明確にするため,追加の実験を行う。 以上の実験・調査によって得られたデータをもとに、引き続き共分散構造分析などを通して、窓からもたらされる視環境の評価構造導出の分析、および眺望性評価のための物理指標の導出・検証を進める。実用的な指標への落とし込みや窓・開口部の評価・設計規準(日本建築学会)作成に向けた眺望性指標の閾値の検討などは、当初は2024年の課題としていたが、2023年度中に解析をスタートさせたい。 なお当初計画では実オフィスにおける長期実測に関して10オフィスを目標としていたが、長期実測については2023年度までに5オフィス、短期の統制的実験(実測)については3オフィスとなる予定である。2024年度前期に1オフィス程度を追加できるよう対象の選定を進める。なお上記の中で2オフィスは関東圏外の関西・北陸ら既に選定できているため、2024年度は極力北海道/東北あるいは九州から選定したい。
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