研究課題
基盤研究(C)
大規模な地域移行支援「ささがわプロジェクト」の退院12年後転帰は、78名中15%が死去し、生存67名(平均66歳)は入院中13%、施設入所6%、地域生活維持67%だった。退院後12年間に26%は再入院なく、54%は精神科へ再入院なく地域生活を維持した。60歳以上のグループホーム入居者84名を検討したところ, 加齢とともに身体・認知機能の低下を認めたが, 主観的指標や向老意識は, 年齢群による差を認めなかった。地域生活する高齢精神障害者67名(平均69歳)を調査した結果、支援ニーズは75歳以上では異なり、身体機能低下のため活動よりも対人交流に楽しみにし、健康に留意し周囲を頼りにする傾向があった。
本研究の意義は、海外においても例の少ない、統合失調症患者におけるサクセスフル・エイジングについて社会精神医学的に検討したことであろう。わが国において、精神科に長期入院した後であっても、適切な支援のもとでは、多くの精神障害者が再発することなく地域生活を継続し得ることが示された。地域生活支援においては、患者の体力の低下が目立ってくる75歳を境に、変化したニーズに応える支援を工夫することが必要であろう。本研究の成果は、医療や福祉の現場において今後ますます増えると予想される高齢の統合失調症患者への援助のあり方に益するのみならず、精神保健福祉医療の政策決定にも寄与すると考えられる。
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