バロック時代に広く用いられた舞踏譜は、俯瞰図として振付を記すものであり、ステップに加えて踊り手が描く軌跡(=フィギュール)をも克明に記録する。既存の研究は、この軌跡に対称性が顕著であることを指摘してきた。本研究では、この軌跡を分析する独自の方法の確立を試みた。その際、対称性を空間や時間に基づいて区分し、加えて平行や動作の反復という重要な動作原理も加えて分析方法を確定した。 さらに、この方法に基づいて多数の舞踏譜集の分析を行い、当時の振付における軌跡には、劇場用振付と舞踏会用振付で大きな差があること、踊り手の性別による差や、舞踏の種類による差が顕著であることなどを明らかにした。
|