研究概要 |
本研究の支柱となった代数学シンポジウムを毎年1回, 合計3回開催し, 本邦における代数学研究の進捗発展を見定め, 各研究協力者の研究進展へ指針と刺戟を与えた. 代数幾何学と数論の融合的手法による曲面の分岐理論の構成による2次元Serre予想の解決, 組み糸群による分岐ガロア被覆理論とそのヤコビ和やガロア表現への応用, 高次円単数の新しい導入, 詳しい相互法則のクリスタリンコホモロジーによる統一的解釈による一般な環への拡張を示唆したことなどは, 重要な研究成果である. 有限単純群分類後の有限群研究の方向づけとして, 分類定理の応用によるHall予想及びJanusz予想の解決, 組み合せ理論におけるHadamard行列の数論的新構成法, 岩堀代数と絡み目に関する新しい多項式不変量の発見なども著しい成果である. 代数幾何学と環論関係の研究では, 代数的閥体上の単線織多様体の構造論, 可換環論への有限表現型概念の導入, Buchsbaum環の詳細な研究などに重要な進展をみた. 更に, 数論, 群論, 環論, 代数幾何などに関して, それぞれ小規模の研究集会を毎年1回程度開催し, ゼータ関数の特殊値, 群環の同型問題, 遺伝環, 多元環及び代数群・リー環の表現論, 東屋多元環とホップーガロア拡大などに興味ある研究結果をあげた. 又, ディンキン数学研究集会, 幾何と保型形式研究集会において, 代数学と関連する諸分野の研究者との研究交流を図り, 統計物理の格子模型や特異点のディンキン図形, 対称空間の幾何学及びその不変量であるゼータ関数の数論などに意義深い成果を得た. 以上の様に, 代数学及びその関連分野における現今の重要な研究課題を総合的, 有機的に研究発展させ, 多くの重要で興味ある研究成果が得られ, 関連する他の諸分野へも幾多の良い刺戟と影響を与えて, 本邦における代数学の幅広い進展をみた.
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