研究分担者 |
柳沢 裕之 東京大学, 医学部・衛生学教室, 助手 (10200536)
長橋 捷 東京大学, 医学部・衛生学教室, 助手 (90009994)
真鍋 重夫 東京大学, 医学部・衛生学教室, 助教授 (90165928)
石川 晋介 , 医学部衛生学教室, 助手 (80168195)
荒川 泰昭 , 医学部衛生学教室, 助手 (40134522)
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研究概要 |
1.生体内結合物質に関する成果 (1)クロム結合物質:イヌ肝, ウサギ肝, ウシ初乳より分子量約1500の体内結合物質を精製した. グルタミン酸, システイン, グリシンより成り, 1分子に1原子のクロムを結合していた. 生理学的役割は, 一つはクロムの毒性を減弱させること, 排泄を促進すること, 体内のクロムキャリヤーとなることのほか, 一部の分画でインスリン作用増殖作用が証明され, 未知の耐糖因子であることが分った. クロムの肺萎縮とも関係があった. (2)ニッケル結合物質:ラット肝より分子量900, グリシン, グルタミン, システインより成る生体結合物質を精製し得た. in vitroで飽和状態, すなわち1分子あたり1原子のニッケルを結合する. 又, 銅や亜鉛と一部置換するが非必須元素とは置換しない. BALB/C3T3培養細胞のコロニー形成試験で, 無機ニッケルより, 本結合物質結合ニッケルの方が, 毒性が低いことも分り, ニッケルの一般毒性に対しては防御的に生体内で作用していると推定された. これらの生体内結合物質の発見とその作用の証明については, 他の報告はない. 2.金属発癌に関する成果 (1)BALB/C3T3培養細胞を用いたトランスホーメイション実験で無機ニッケルは, 全く作用を示さなかったが, 生体内結合物質に結合したニッケルは, タイプIIIのトランスホーメイションを惹起した. 細胞膜通過と関係あると思われる. また, 化学形態による生体作用の相異も証明された. (2)有機スズの抗悪性腫瘍作用の実験では, in vivoでも, in vitroでもその濃度・投与量および作用時期によって, 抗悪性腫瘍作用が証明された. とくにジブチルスズではその作用が大で, 細胞膜のアラキドン酸遊出阻害によるものと推定された.
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