研究分担者 |
穂苅 環 新潟大学, 医学部付属病院, 助手 (10173577)
羽柴 正夫 新潟大学, 医学部付属病院, 講師 (30108047)
遠藤 裕 新潟大学, 医学部, 助手 (90168831)
丸山 洋一 新潟大学, 医学部付属病院, 講師 (00111724)
東 英穂 久留米大学, 医学部, 助教授 (10098907)
MARUYAMA Yoichi Niigata University School of Medicine, Lecturer
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研究概要 |
低酸素のもたらす微小環境不全や浮腫等の二次的作用を除き, 低酸素の直接作用を検討するため, 海馬スライス標本を用いた低酸素潅流実験により神経細胞の電気的活動の細胞内記録を行った. 多数のニューロンで膜電位は低酸素負荷により, (1)軽度の一過性脱分極, (2)5〜10mVの過分極, (3)徐々に進行する緩やかな脱分極, (4)急峻な脱分極の4相を経て0mVに致った. また, 低酸素によりIPSPがEPSPに先立って抑制されることを見出した. イオン組成変化や薬物の影響を検索することより, 低酸素負荷後まもなく出現する一過性脱分極はシナプスを介する現象であること, 膜過分極は膜電位非依存性K電流, 例えば, 細胞内ATP減少によって活性化されるK電流あるいは細胞内Na濃度の上昇によって活性化されるK電流によることが示唆された. 脱分極が緩やかに進行する原因としてNa/Kポンプの一部活性維持や潅流液での外液Kの荒い流しなどが考えられた. また, 急峻な脱分極過程と膜の不可逆性変化においてはCa2+の細胞内流入の関与が示唆されるなど, 低酸素の直接的作用を解析することができた. 一方, 生体は外的侵襲に対して自らを防御する機構を備えている. 頭蓋骨より25G注射針を4カ所, 深さ5mm刺入する脳損傷を与えたマウスでは, 一週間後, 両側頚動脈結紮による脳虚血に対して, 非創傷マウスに比較して生存率が有意に高いことが見出され, 軽度脳損傷により脳虚血に対する抵抗性増大機序が発動することが示唆された. その抵抗性増大機序は損傷時の麻酔薬に影響されず, 脳虚血時の麻酔によって影響されること, さらに, 軽度脳損傷は局麻痙攣の閾値を上げ, 痙攣によるasphyic deathを予防することがわかった. これらの機序は明らかではないが, 抵抗性増大の機作をさらに検索することにより, 脳虚血・脳低酸素の予防および治療の手がかりが期待できると思われる.
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