研究概要 |
日本産アヒルにアヒルB型肝炎ウイルス(DHBV)を接種する事で種々の感染様式が観察された. フ化当日接種では健常キャリアー, フ化3日目接種では軽度の肝臓の炎症を伴う持続感染, 5日目以後10日目までは軽い肝炎を伴う一過性感染, 14日目以後は不感染と云う結果を得た. 感染ウイルス接種量により多少の変動をみるが, フ化当日, 14日目には大きな感染性の境がみられた. キャリアーは殆ど100%作成可能であるが, 持続感染の成立したアヒルは殆ど健常キャリアーであり, 5才令でも, 肝硬変や肝癌等の慢性肝疾患がみられぬ点はB型肝炎ウイルス(HBV)と相違する点であった. これは, DHBV感染での肝炎反応がHBVに比し, 非常に弱い事と関連する可能性がある. 上記の成績より宿主/ウイルス関係の免疫能の関与が示唆された, 臨床で使用する免疫調節剤3種(steroido,cyclophosphamide,OK-432)を投与してDHBVの感染様式を比較した結果, 免疫抑制剤(cyclophosphamide)により肝炎反応は消失しviremiaは延長したが, キャリアーでは同剤投与によりDHBVは有意に増加はしなかった. この事よりcyclophosphamideは肝炎反応を抑制する事で2次的にvirusの排除を抑制すると考えられた. 免疫賦活剤OK-432投与では肝炎反応を強くする事が可能であり, また直接ウイルス増殖・抑制ではなく免疫能を高めて肝内ウイルス排除に有用と考えられたが, 排除期間はコントロールと変らず, 投与例の選択が必要と考えられた. steroidoはDHBVに関連しては大量投与しても肝炎の抑制はなく, むしろ直接にウイルスを増殖させてviremiaを延長すると考えられた. 免疫調節剤投与による感染様式の変化はHBVのそれに類似しておりDHBVをHBVのモデルとして使用し得ると考えられたが, 更に詳細な細胞レベルでの比較が必要であると共に, 持続性肝病変を持つキャリアーの作製が必要と考えられた.
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