研究課題/領域番号 |
60570324
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研究機関 | 島根医科大学 |
研究代表者 |
島田 宜浩 島根医大, 医学部, 教授 (50032868)
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研究分担者 |
池田 敏 島根医科大学, 医学部, 助手 (60151289)
西村 公一 島根医科大学, 医学部, 助手 (30144702)
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キーワード | DHBV / HBキャリアー / ステロイドホルモン |
研究概要 |
61年度の目的はアヒルB型肝炎ウィルスのクローニングと、ウィルス感染に及ぼす宿主の免疫状態についての研究であった。遺伝子クローニングに関しては血中よりウィルスを集め、内因性ポリメラーゼ反応を行なった後、制限酵素EcoRIで1ヵ所を切断し、アルカリフォスファターゼ処理後、DNAリガーゼを用いてpBR322のEcoRI部位に挿入しクローニングを行ない3000bpのDHBV-DNAを得た。現在制限酵素切断断面をサブクローニングしてDNAの塩基配列を解明中である。後者の目的に関しては、主として免疫抑制剤として使用されるステロイドホルモンを使用した、免疫抑制状態の宿主におけるアヒルB型肝炎ウィルスの感染様式を検討した。ステロイドホルモン投与により血中及び肝臓内のウィルスの排除に著明な遅延がみられ、これは免疫抑制剤投与中の患者や幼小児期の感染が一過性よりも持続性感染に移行しやすいとの臨床的事実に一致する。又、肝組織像においても肝炎所見はステロイド非投与群に比し軽度であり、肝炎発生に宿主の免疫が関与する可能性が示された。この事実は、今後、本系を、人のHBVの治療モデル(特に免疫療法面)として使用しうる事を示したものと考えられる。更にステロイド投与により有意にDNAポリメラーゼ活性が低下するにもかかわらず、DNA自体は増加する現症がみられ、ステロイド剤の、免疫抑制以外の作用効果がウィルスDNAのレベルに働く事が予想された。この事は、アヒルB型肝炎ウィルスの増殖形態や宿主DNAとの相互作用(特にインテグレーション)という分子生物学的研究にステロイドホルモン投与が有益である可能性を示したものと考えられた。
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