研究概要 |
本研究の最終的な目標は, 臨床レベルで^<31>P-NMRが癌の治療効果判定の鋭敏な評価法となり得るかどうかの検討にある. 過去2年間にわたって, 主にマウスのグリオーマに対する抗癌剤投与(ACNU, 5'-DFUR)による影響に関する評価を, ^<31>P-NMR, フローサイトメトリー(FCM)及び病理組織学的に行い, ^<31>P-NMRが高エネルギーリン酸の比により他の検査法より比較的早期に腫瘍の代謝動態を解析できることが判明した. 今年度は, これまでの動物実験での検討を臨床例に応用すべく, 東大病院に設置されている全身用MR装置を用いて表在性悪性腫瘍(主に骨肉腫, 軟骨肉腫)につき基礎的検討を行った. 方法は, MRI(magnefic resonance imaging)の撮影により病変の部位を同定し, 次いでその部位より^<31>P-NMRスペクトルを得る操作を抗癌剤の動注療法の前後に行った. 治療前の腫瘍の^<31>P-NMRスペクトルは, Piなどの高エネルギーリン酸, PDE, PMEなどのホスホリピッド由来のピークが高値を示した. 大量動注後は, Pi/PCr値の減少, PME, PDE値の減少傾向がみられ, これらの値が治療効果の指標となる可能性が示された. 症例によっては, ^<31>P-NMRスペクトルに変化がみられないものもあったが, これらの症例は, 組織的検索でも治療前後で変化がみられなかった. このように未だ症例数が少ない検討ではあるが, 臨床例でも実験動物から得られた^<31>P-NMRスペクトルの結果と同様の傾向がみられることが解った. このため, 臨床例でも腫瘍に対する抗癌剤の投与に関する効果が^<31>P-NMRで判定できると考えられ, 今後, 悪性腫瘍に対する抗癌剤の効果の判定, また, 適切な抗癌剤の選択などにつき検討を行っていくつもりである.
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