研究概要 |
ウマのフェリチン(分子量50万)を高分子量物質のモデルとして用い, その抗体を吸着させた直径30〜100μmのガラスビーズを固相として, 從来の酵素免疫測定法の改良, および10^<-22>モルの高分子量物質が測定可能な, "免疫酵素的サイクリング"を開発した. 1)240個のガラスビーズを用いて, 1〜15×10^<-9>モルのフェリチンを含む溶液54nlに加え, 38゜Cで5分間抗原抗体反応を行い, フェリチンを固相に固定した. よく洗浄後このビーズ塊を290nlのFab'-ガラクトシダーゼ抱合体液に加え, 38゜Cで1時間反応させて, フェリチンとFab'-抱合体を結合させた. ビーズ塊を洗浄して, 32μlのメチルウンベリフェリルガラクトースを基質として含む反応液に加え, 38゜C1時間反応させてメチルウンベリフェロンを遊離させて, 蛍光測定を行った. ビーズ塊を用いることにより, 従来2日がかりの測定を2時間半に短縮し, また微量の反応液を用いることにより, 抱合体や基質の使用量を1/500〜1/50に減らして節約できた(酵素免疫測定法の改良). 2)1)に述べた手技を同様に行い, 1〜5×10^<+20>モルのフェリチンを試料として, またガラクトシダーゼ反応には440nlの2-ニトロフェニルーβ-D-ガラクトシダーゼを基質として含む溶液を用いた. 遊離されたガラクトースを, 十分量のNAD^1とガラクトース脱水素酵素を含む440nlの反応液を加えて, 相当量のNADHに転換した. このNADHをNADサイクリングにより2,000倍に増幅して測定した. この免疫酵素的サイクリングにより, 1)より感度を30倍上げることができた. 3)直径30〜100μmのガラスビーズ1個を用い, 1〜10^<-22>モルのフェリチンを含む2.6nlの反応液に加えた. 抱合体とガラクトシダーゼ反応液は15nlを用い, 生成されたガラクトースを脱水素酵素でNADHとし, このNADHをNAD二重サイクリングにより, 11万倍に増幅した. この測定は60〜600個の分子を測定でき, 現存する測定法中最高の感度を示した.
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