研究概要 |
本研究は, 極低バッグラウンドのガンマ線検出器(極低, γ検出器と略称する)を開発製作し, それを用して短寿命不安定核のβ崩壊の微弱な分岐を精密測定することによりβ崩壊の行列要素を精良く決定しようとするものである. そのため, 初年度には, β^+崩壊で発生する陽電子の対消滅ガンマ線(2個の5vxkevγ線)を大立体角のBaF_2検出器で検出し, Ge(HP)γ線検出器をゲートする^+BaF_2を用いた陽電子ゲートによる極低バックグラウンドγ線検出器を設計・製作し, ^<22>Naほかの標準線源を用いてオフラインの測定を行なった. バックグラウンド抑止因子としてL10^<-4>のすぐれた値が得られた. 2年度には, 同装置を用してオンライン実験を行なうため, テープ導管を製作し, テープ輸送装置に極低BGγ検出器を組入んだ. 特に半滅期1秒以下の短寿命核を目標とするので, 既存のテープ輸送装置を大改造して, 大巾な性能アップを実現し, テープ輸送時間として△t=0.35秒が得られた. また, テープ駆動の安定性と信頼性も大巾に向上し, 実験が容易になった. 本番のオンライン実験として, 半滅期0.20秒の鏡映核^<57>Cuをイオンガイド式オンライン質量分離器で分離し, 極低BGγ検出器により, 1111.6keVγ線を検出することに成功した(質量分離同定した^<57>Cuについては今回が最初). γ線の絶対強度を求めるため, より長寿命の^<54m>Co(1.46分)及び^<58>Cu(3.2秒)についても同様に実験し, それぞれのγ線を検出することができた. 但し, 同検出器内のプラスチックβ+検出器の効率が予想より3〜5倍小さいのは具合が悪いので, テープ輸送速度の更なる向上とともに, 今後の問題である. 本装置は^<57>Cu以外にも多数の短寿命核の微弱γ線の測定にも用いることができる.
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