研究概要 |
61及び62年度に亘り, 異なったホメオスタシス機能の連関統合発現における視床下部ペプタイド類の視床下部ニューロン作用機序を解析した. 得られた知見は次の通りである. (1)代謝, 摂食, 体温に関与するボンベシン, ニューロテンシンの視束前野温度ニューロンに対する効果を多連微小電極法で調べると, 温, 冷両ニューロンともに約半数以上が活動抑制をうけた. これはこれらの物質が起す変温作用, 代謝抑制を説明でき, 食欲抑制や内分泌反応などの一連の関連した反応の一環をなす事が明らかになった. (2)一方, TRHは温及び冷ニューロンの約半数がそれぞれ活動抑制と促進を起こすので, TRHによる体温上昇と代謝促進を説明できる. (3)視束前野温度ニューロンの大多数は圧/容積受容器からの循環入力及び末梢浸透圧入力の収束をうけている事が判明し, 低血圧時の体温下降や脱水時の体温調節抑制など, 循環系, 浸透圧調節系及び体温調節系の連関機序の一部を構成している事がわかった. (4)同様に, 温度ニューロンはアンギオテンシンIIやバゾプレッシンにも応答し, (3)に述べた連関機序において働いている事が示唆された. (5)睡眠, 体温, 節食に関与するムラミルペプタイド, インターロイキンI, インターフェロンαは視束前野スライス標本で記録した温度ニューロンやブドウ糖感受性ニューロンに作用する事が判明した. その反応様式から, 生体防衛反応の初期における発熱や食欲抑制という適応的価値のある反応はこれらの免疫制御物質の視床下部ニューロンへの作用による事が判明した. (6)以上より, 異なったホメオスタシス系の連関統合機序には各調節系間の相互神経回路網の他に, 1つの物質が複数の調節系のニューロンに一連の効果をもたらす事と, 1つのニューロンが複数のホメオスタシス系の調節因子入力の収束をうける事の2つの要素も関与している事が明らかにされた.
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