研究概要 |
ドパミンによるニューロペプチド生合成制御はニューロペプチド含有細胞において, ドパミン受容体が刺激された後, 種々の細胞内反応が起こり, 最終的にペプチド合成の変化が生じると考えられる. このメカニズムの詳細は不明であるが, サイクリックヌクレオチドやフォスファチジルイノシトール代謝回転等のいわゆるセカンドメッセンジャー系を介するものであることがいくつかの実験結果により示唆されてきた. 本研究ではこれらのセカンドメッセンジャー系において中心的な役割を果たしていると思われるいくつかの蛋白質燐酸化酵素の構造及び分布について以下のような結果が得られた. 1.サイクリックAMP結合領域配列に基づくホモロジープロービング法によりラット脳cDNAライブラリーからサイクリックAMP依存生蛋白質燐酸化酵素のI型サブユニットの全コード領域を含むcDNAクローンを得た. このクローンの塩基配列から全アミノ酸配列が決定され, このサブユニットが分子量42.963の蛋白であることが明らかになった. 他のサイクリックヌクレオチド結合蛋白との比較によりサイクリックAMP結合部位, 触媒サブユニットとの反応部位, 及び燐酸化部位等が同定された. 2.プロテインキナーゼCにはいくつかのサブタイプが存在することが遺伝子クローニングにより明らかにされた. これらのサブタイプの細胞局在を明らかにするため, サブタイプ特異的な抗体を作製し, 酵素抗体法による解析を行なった. その結果, γタイプは主に中枢神経系に存在し, 小脳のプルキニエ細胞や海馬の錐体細胞に多いこと, そのほかオルタナティブスプライシングにより生成されるβ1およびβ2タイプもそれぞれ特定の神経細胞や神経終末に一致した分布を示すことから, プロテインキナーゼCのサブタイプはそれぞれ異なった神経機能に関与することが示唆された.
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