研究概要 |
MHCクラスIIIに属する遺伝子群の中のマウス補体第4成分(C4)及びそのアイソタイプSex-limited protein(Slp)の遺伝子の調節機構を, 遺伝子クローニング, 遺伝子導入の手法で解析した. 即ち, 近交系マウスの中からC4, Slpの産生異常を示す数系統を選びCDNA, 遺伝子DNA, コスミドのライブラリーを作り, C4, Slp, DNAを分離し, その構造と発現を追求したのである. 得られた成果は,次のようにまとめられる. 1 C4の高産生系(BIO, FN)と低産生系(BIO, BR)の間には, 約20倍のC4血清濃度の差がみられる. 両系統の肝細胞のmRNAの定量, 校内RNAの定量及びC4遺伝子の5'上流領域の転写調節活性の測定(CATアツセイ)によりC4低産生を決定している遺伝機構は, 主として転写以降-翻訳以前の段階で働いているものと認めた. 2 C4遺伝子とSlp遺伝子は, 高い塩基配列上の相同性を有するのに, 発現様式には大きなちがいがある(前者は構成的発現, 後者はテストステロン依存性発現). FMマウスからC4, Slp両遺伝子を分離し, 5'上流領域の転写調節活性を, 培養細胞への遺伝子導入(transient及びpermanentのCATアツセイ). また両遺伝子5'上流領域のからハイブリッド分子を作り, その転写調節活性を調べた. その結果, 両遺伝子の転写調節活性には大きな違いがあり, その違いはSlp遺伝子にある強い阻害領域内存在によることを証明した. 3 Slpが例外的に構成的に発現されているマウス系統C3H.W7からコスミドライブラリーを作り, C4, Slp遺伝子クローンを分離し, その塩基配列を広い範囲で比較した. その結果, この系統にはC4遺伝子, Slp遺伝子各1個の他にC4-Slp recom binant遺伝子3個(5'側がC4由来, 3'側がSlp由来)があり遺伝子の中央部における複数回の不均等交叉のために生じたものとおもわれた.
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