研究概要 |
内視鏡下至乳頭的に採取した純膵液において, 通常のパラメーターに加えて, 我々の開発したEIA法によりlactoferrin(LF)を測定し, protein plug(PP)の有無との関連など多方面より分析した. さらに, 最近開発された各種癌関連粘液糖鎖抗原を膵液で測定し, また, 膵疾患においてこれらの免疫組織化学的検討を行った. 得られた成績は, 以下のように要約される. 1)膵液中LF濃度は慢性膵炎(CP)で46%に異常上昇がみられ, 石灰化の有無で検討すると, 非石灰化群で37%であるのに対し, 石灰化群で82%と明らかにLFの陽性率は高かった. 膵管像の異常度との関連では, 膵管像の変化が高度になるにつれ, LF値も上昇した. 以上より, 膵液LF値はCPの重症度を反映することが示唆される. 2)膵液中PPはCPで55%にみられたが, 膵癌(PC)8%に認められる以外, 他疾患ではみられず, CPに比較的特異性が高い. 3)PPは非石灰化CPで48%に対し, 石灰化群で82%と高率にみられた. しかし, PPの有無で膵管像や外分泌機能の異常度には明らかな差異は認められなかった. 4)LF濃度とPPの有無との関係では, LFの平均値とその異常上昇率はPP(-)群に比して, PP(+)群で高い傾向にあった. 5)膵液中CA19-9値はPCのみならずCPでも著明に高く, その異常率はPCで92%, CPで85%であり, 腫瘍マーカーとしての有用性は乏しいが, 膵障害を反映する鋭敏なマーカーになりえると考えられる. 6)膵液中ST-489とSLXはPCのみで明らかな上昇がみられ, 前者で57%, 後者で40%が陽性であり, 陽性率はそう高くないが, 特異性は非常に高い. 7)I型糖鎖に属すCA19-9とCA-50はPCで強く発現するが, 特異性が乏しい. II型糖鎖のCSLEX-1とSLXは特異性は高いが, PCでの発現は弱い. ST-439とDU-PAN-2はPCでの発現が強く, 特異性も比較的優れている. 8)CPでは小膵管の増生部を中心にCA19-9の発現が高度となり, CPでの膵液中CA19-9の上昇として反映されるのであろう.
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