研究概要 |
本年度では、各種膵疾患を中心として、内視鏡下径乳頭的に純膵液を採取し、重炭酸,amylase,総蛋白などの通常のパラメーターに加えて、我々の開発したRIA法によりlactoferrin(LF)を測定し、さらに最近開発された癌関連粘液糖鎖抗原であるCA19-9,DU-PAN-2,CA-50,ST-439,CA-125をも測定し、分析を加え、以下の成績を得た。1.口膵液中CA-125とDU-PAN-2値は各疾患群で明らかな差異はみられず、診断のパラメーターとはなりえないと思われる。2.膵液中CA19-9値は椁性膵炎(CP)群でも対照(C)群に比して著明な高値を示し、PC群とかなりオーバラップするものがみられた。C群を基準にすると、PC群100%,CP群62%が異常高値と判定された。血清CA19-9測定の有用性に比較すると、腫瘍マーカーとしてあえて膵液中のものと測定する利点はないかもしれないが、CPでもC群に比して、著明に高いので、膵障害を反映する指標として鋭敏なパラメーターになるように思われ、今後、免疫組織学的検討も加え、その意義を明らかにしていく予定である。3.膵液中ST-439値についてみると、C群で殆ど検出されないが、PC群では78%,CP群では15%に検出された。しかし、CP群ではいずれも低値で、カットオフ値を考慮すると、CPでは総て陰性で、PCでは60%が異常高値と判定された。膵液中ST-439の測定は、PCに特異性が高く、鑑別診断にも有用であると思われ、今後、免疫組織化学的検討も加え、その意義を解明したい。4.膵液中LF濃度はCPI群で46%,CP【II】群で20%に異常高値がみられた。一方、石灰化の有無で検討すると、石灰化群で91%,非石灰化群で37%が異常高値を示した。膵液中LF測定は当初期待していたような軽症のCP診断には有用性は乏しいと思われるが、症例を増やして、各種臨床病理的所見と対比し、その病態生理的および臨床的意義を解明していく予定である。
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