研究概要 |
本研究は"Ischemia/reperfusion injury"の発生機序の解明と防止策の開発を目的とした. 研究成果は次の5項目にまとめられる. (1)動物を用いた心停止蘇生モデルでの脳機能と過酸化脂質量との関係:ラットを対象として, 100%窒素吸入によりhypoxic hipoxiaによる心停止とする. 蘇生後の行動量を観察すると1週間にわたって行動のパターンが乱れた. そして脳内過酸化脂質量の増加がみられた. カルシウムきっ抗薬であるニカルジピン, ニモジピンの前処置は行動の乱れを軽度にし, 脳内過酸化脂質量の増加を抑えた. (2)各種ショックモデルでの臓器内過酸化脂質量の動態:ラットを対象として出血性ショック, エンドトキシンショック, 内蔵虚血性ショックのモデルを作製した. いずれのモデルでも肝臓での過酸化脂質量の蓄積がみられた. そしてキサンチン酸化酵素(XOD)の活性上昇とスーパーオキシドディスムターゼ(SOD)の活性低下をもたらした. (3)酸素遊離基による臓器障害:麻酔下でラットの気管内へXODとキサンチンを注入すると, 肺の形態的変化, 水分の蓄積, ガス交換能の低下, 過酸化脂質の蓄積がみられた. (4)内蔵虚血/血流再開後の肝臓酸素遊離基生産量:虚血と血流再開後のモデルでは肝細胞のミトコンドリアの酸素遊離基生能の上昇がみられた. (5)酸素遊離基の産生抑制と排除機構の強化がショックモデルの生存率に与える影響:ラットのエンドトキシンショックモデルに, XOD阻害薬(アルプリノール)の前処置, スキャベンジャー(ウシ型SOD, カタラーゼ), 化学的クエンチャー(還元型グルタチオン, α-トコフェロール)を投与したところ, SODは生存率の有意な改善をみせた. (6)臨床導入可能な酸素遊離基の活動抑制法:内臓虚血モデルに細胞工学的手法で生産されたヒト型SOD(20mg/kg)を投与すると, 生存率を著しく改善した.
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