研究概要 |
時間・距離・速度の関係概念の発達を調べるために, 幼稚園年少組の幼児から小学5年生にいたる172名, ならびに大学生21名を個別に実験するとともに, 幼稚園年少組からの縦断的研究(7か月間隔)を行った. その結果次のようなことが明らかになった. 1.時間と距離の比例関係, 距離と速さの比例関係に比し, 時間と速さの反比例関係の把握がもっともむつかしく, 5, 6才児ではむしろ比例関係ととらえる方が一般的である. 2.7, 8才にかけて, 急速に時間と速さの反比例関係が形成される. そのころその影響を受けて距離と速さの比例関係が一時的に不安定になる. 3.9才ごろまでには多くの子どもは時間, 距離, 速さを3者関係で把握するようになる. 4.個人差が大. 次に, 小学校5年算数「速さ」について, 現行の教材構成の分析が行われ次のような問題点が指摘された. 1.物体の動きを目の前にした速さの導入になっていない. 2.速さを1つの新しい量として把握させていない. 3.速さの指導が, 直接比較から間接比較という量の指導の原則からはずれている. 4.速さの基準の観点と量感の養成が欠落している. そこで, 追いこし事態の経験を基礎とし, 上記の子どもの速さの概念形成過程を参考にしながら, 速さの量感を養成する新しい教材を構成した. 速さの比較には, パソコンによるシミュレーション画像を利用した. 大量の信号・画像データーを高速で処理するためにPASCAL言語とその処理系としてTURBO PASCALを使用した. このような新しい教材構成にもとづく実験授業を2学級で各10時間行った. パソコン画面は分配器によって8台のディスプレイに提示された. また現行教材構成にもとづく授業も十分教材分析した後, 2学級で各10時間行った. その教授効果の比較の結果, 新しい教材構成にもとづく方が, 若干教授効果が高いこと, 既習レベルの高い子どもに新しい教材構成はより効果的であること等が明らかになった.
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