研究概要 |
1 統計力学の基礎としてのカオスの研究. カオスの研究によれば, 分布関数はt→∞と共に点毎には収束しない. ここで法則収束の概念を導入すると, 分布関数はt→∞で収束する. 法則収束とは確率論の概念で, t→∞ではちがった確率法則に収束するという意味である. tが有限でもこの概念を援用すると線形広答理論の新しい室式化が可能であり, 従来の線形応答理論のもつさまざまな欠陥を取り除くことができる. またこの法則収束した分布関数がt→∞で一室であればエルゴード性をもつことが示される. このことはカオスの力学からのエルゴード理論への一つのアプローチとなるであろう. 2 量子系のカオス. 量子系のカオスについてはその存在の有無や, 古典論との対比などにおいて, まだ統一した見解がえられていない. 本研究では量子系のカオスの本質は作用積分にあることを明らかにした. それは, グリーン関数の経路積分に現れる. これによって古典論との対応がつけられ, エネルギーレベルや波動関#の性質も原理的に導かれるはずのものである. また量子効果の##も論ずることができる. 具体的に計算機実験などでしらべる必要はあるが, 基本方針がたてられたことになる. またエネルギー単位の問題の分布と古典カオスの関係や, ランダムマトリックス, 伏見関数などの立場からも量子カオスをしらべた. 3 その他生物にみられるカオスは生物の行動や脳を理解する上での大切なポイントであるとおもう. ゾウリムシの膜電位を解析し, そこに低次元のカオスの存在することを示した. 更にスパイクをふくんだ長時間に亘る解析が必要である. また周期軌道の分岐を一般的に論じた.
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