研究概要 |
近年発熱は炎症反応や免疫反応と表裏の関係にあって, 生体防衛反応という広い立場からの理解が必要になっている. 私共は免疫系と神経系との相互作用を発熱反応を通して追求しているが, この発熱反応発現は多元的な過程の関与によっているとの仮説をたて, 2相性発熱を二つの最終メディエーターで説明している. このうち2相目の発熱出現にはIL-1そのものが血液・脳関門の内側に存在することを仮定せねばならない. そこで近年広く利用されてきたモノクローナル抗体法によってBBB通過経路なり, BBB内側での存在を証明せんとした. 当初自作としていた内因性発熱物質(EP)を抗原としcostimulation methodをアッセイ系としてモノクローナル抗体(mAb)を作製したが, 強い発熱性を呈したために発熱実験そのものに使用できなかった. そこでリコンビナントIL-1(rIL-1)に対するmAbを入手し同様な検討を試みたが, これまたmAb自体の発熱性のため所期の目的を達するには到らなかった. ついでrIL-1に対するポリクローナル抗体(pAb)を得たのでこれを使った検討を試みた. pAbによりrIL-1を中和したものを静脈内に投与すると強い発熱性を呈したが, 小量のpAbを脳室内に投与しても発熱反応は認められなかった. そこでrIL-1βの大量を静脈内に投与すると2相性発熱を確実におこすが, この時予め脳室内にrIL-1βに対するpAbを投与しておくと2相目は消失した. しかし同じ実験をrIL-1αとこれに対するpAbを使って行ったのでは, 発熱反応は全く変容しなかった. これらの成績はBBB内側に出現するIL-1はIL-1βである可能性を示唆している. さらに今後rIL-1βとrIL-1α抗体, またrIL-1αとrIL-1β抗体との組み合わせで実験を行ってみる必要性があることは申すまでもないが, このようにその発熱性を中和させるmAbを作製していきたい.
|