研究概要 |
ミトコンドリアミオパチーの診断は生検筋の組織化学的・生化学的検索により確定される. 我々は過去2年間で本症の診断に必要な体制を整え, 数多くのミトコンドリア酵素異常症を見出し, 病理学的, 生化学的特徴を体系づけた(埜中ら:脳と発達1987, 神経進歩1987). それらの生検筋につき, さらに電顕組織化学, 培養細胞による検討を行ない, 以下の結果を得た. (1)ミトコンドリア酵素異常と筋組織化学所見の特徴につき, 特に複合体I, IV欠損につき検討した. 複合体I欠損ではミトコンドリアの形態異常を伴うことが多いが, IV欠損では伴わない例が多かった. (Chung Nonaka:JNeurol Soi1987) (2)複合体IV欠損乳児致死型では筋細胞は破壊されても再生に乏しいこと, さらに筋線維は培養系でも活性がないことを明らかにした. しかし線維芽細胞では正常活性を示した(Nonaka et al:Brain Develop 投稿中) (3)複合体IV欠損はしばしば脳卒中様発作を伴いMELAS(mitochondrial myopathy encephalopathy lactic acidosis and stroke-like episodes)といわれている. 本症での卒中様発作は多分血管系の異常に由来するとの推定から, 7例の筋内小動脈の検索を行いない, 血管平滑筋細胞内ミトコンドリア異常を形態学的, 数量学的に証明した(Sakuta,Nonaka:Ann Neurol,in press) (4)電子伝達系酵素活性に変動性のあることを2回以上筋生検した患者から証明した. 単一の複合体欠損でも進行するにつれ, 複数の複合体活性の低下をみることが分った. (Koga,Nonaka,et al:Acta Neuropathol in press) (5)複合体IV欠損の組織特異性. 16例の本症の病理像を検討し, 症例ごとにより酵素欠損の組織分布が異なることを見出した. その中でも血管壁に酵素活性がないものは進行も早く, より重症であった(Nonaka et al Neurology, 投稿中).
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