研究概要 |
(1)免疫組織化学的神経束識別法の検討 近年充実してきた市販の一次抗体のうち, 抗コリンアセチルトランスフェラーゼ抗体を一次抗体として利用した. 染色にはやはり市販の染色キットを用い, 染色の対象としてラット・ブタ脊髓神経根を用いた. 染色結果は論文1, 2に示す通りで, ラット脊髓神経根では免疫組織化学的方法でも前根と後根の識別は可能であったが, 染色性の差異(前根と後根), 染色時間とも現在のところチオコリン法の方が優れていた. 酵素抗体法を含め組織化学的方法が定量的観察には必ずしも適していないという問題の他, 脊髓神経根および末梢神経における生化学的な酵素活性の差の検討, 特異性の高い1次抗体の作製, 染色技術の改善, 染色する動物に適合する1次抗体および染色キットの選択が問題として残った. (2)末梢神経損傷中枢断端の組織学的および組織化学的観察 生化学的方法で観察されてきた, 末梢神経損傷後の中枢断端アセチルコリンエステラーゼ活性の低下という現象を組織化学的に観察した. 結紮したラット坐骨神経および殿筋への筋肢では経時的に酵素活性の低下が進行し, 坐骨神経では神経結紮部より15mm以上, 殿筋への筋肢では5mm以上中枢でも活性の低下が認められた. 酵素活性の低下は組織化学的には活性を示す神経軸索の狭小化として現れていた. 中枢断端骨髄神経軸索の狭小化は, 画像解析装置を用いた骨髄神経軸索の横断面積の測定で確認したが, 組織学的には著明な分枝形成(sprouting)も認められた. しかし酵素活性を電顕的に観察すると, 小径骨髄神経のうち酵素活性を示すものは約10%から20%だけであった(論文3, 4, 5, 6).
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