研究概要 |
最近の歯科保存修復領域で光重合型レジンが多く利用されるようになったが, 光の照射深度が浅いため, 深部で未重合レジンが残り易いなどの欠点がある. そこで本研究では, これらの点の改良を目的として光重合型レジン試作のための基礎的研究を行なったものである. 1.試作レジンベースと開始剤の検討:各種多官能性モノマーならびに開始剤(光増感剤と還元剤)の各種組合わせによる重合性の検討の結果, ビス(1-メタクリロイルオキシー3-アクリロイルオキシー2-プロパントリイル)-N, N′-ヘキサメチレンジカルバメイト(MAP-HMDC), N-ペンチルグリコールジメタクリレート(NPG), ジアクリロイルペンチリデンペンタエリスリット(DAPPE)のコモノマーが, また開始剤としてカンファーキノン(CQ)をモノマーに対し5wt%, 更に還元剤としてジメチルパラトルイジン(DMPT)5wt%添加したものが, 物性ならびに残留モノマー, 重合性の検討の結果, 最も優れた組成成分であることが判明した. 2.無機フィラーの検討:重合性を無機フィラーおよびベースモノマーの屈折率から検討の結果, 両者の屈折率の差が小さい程, 換言するとベースモノマーと無機フィラーの屈折率が近似している程レジン重合性の優れていることが判明した. ちなみに, Bis-GMAの屈折率1.5488, TEGDMA, 1.4589, MAP-HMDC-NPG-DAPPEコモノマー1.4719. これに対してシリカ系フィラー, 1.45, アルミニウム系フィラー1.56であった. 重合性検討の結果, シリカ系フィラーを配合した試作光重合型コンポジットレジン(MAP-HMDC-NPG-DAPPEコモノマー組成)が最良の物性と重合性を示すことが判明し, 臨床応用の可能性がえられた.
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