研究課題/領域番号 |
62450060
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研究種目 |
一般研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
独語・独文学
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
神品 芳夫 東京大学, 教養学部, 教授 (50012282)
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研究分担者 |
中 直一 東京大学, 教養学部, 助教授 (50143326)
高橋 輝暁 東京大学, 教養学部, 助教授 (60080420)
麻生 建 東京大学, 教養学部, 教授 (80012524)
新田 義之 東京大学, 教養学部, 教授 (60012340)
岩村 行雄 東京大学, 教養学部, 教授 (30012438)
吉島 茂 東京大学, 教養学部, 教授 (50011309)
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研究期間 (年度) |
1987 – 1989
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研究課題ステータス |
完了 (1989年度)
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配分額 *注記 |
5,000千円 (直接経費: 5,000千円)
1989年度: 500千円 (直接経費: 500千円)
1988年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
1987年度: 3,500千円 (直接経費: 3,500千円)
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キーワード | ドイツ文化の受容 / ドイツ語学習の歴史 / 日独文化交流史 / ドイツ文学研究の変遷 / ドイツ留学した日本人 / 来日ドイツ人の役割 / ドイツ文学翻訳文献 / ドイツ関係図書文献 |
研究概要 |
文献探索については、大阪大学言語文化部所蔵の鈴木文庫、関西学院大学図書館の玉林文庫、中央大学文学部の田中梅吉文庫などに保存されている明治大正期の独和辞典、教科書、翻訳書など貴重な文献の実地調査を行なった。長い間無視されてきたこれら第一次文献を発掘調査できたことは、本研究全体を通じて最も大きな成果であったと思われる。さらに独協学園の戦前の資料を検討し、戦前戦中に大学でドイツ文学を学んだ人物に対する面接調査も実施し、日本のドイツ語教師が国家体制のなかにどのように組み込まれ、その過程でドイツ人教師がどのような役割を演じたかを考察した。以上を綜合して私たちが得た結論におよそ次のようなものである。日本のドイツ語教育は明治初期、先行する英語とフランス語を追いかける形で始まった。ドイツ本国が統一後の隆昌期にあったので、富国強兵論の政治家たちはドイツに着目し、ドイツ語学習は国家有為の人材養成に資するものとして定着した。したがってドイツ文化受容も政府主導型だった。ドイツ文学者は対象への崇敬の念がつよくて、批判精神が乏しかった。これがナチス・ドイツの文化政策への迎合にもつながった。しかし外国語教育は一度制度として確立すると、学習自体が独り歩きを始め、創設の意図に反する方向にも枝を伸ばしていくが、それが日本文化に豊かな重層的影響を与えてきたことも忘れてはならない。一部のドイツ語学習者は早い時期からヨ-ロッパの社会主義思想の紹介に努め、その語啓蒙思想や唯物史観は思想弾圧の時代にも研究が継承され、また独文出身者から中野重治や久保栄のような文学者が生まれた。他方、ドイツ・オ-ストリアの世紀末文学や表現主義演劇の受容の全貌も今回の文献調査で明らかになったが、その日本近代文化への影響が多岐にわたっていることも従来の観測を越えるものであり、今後の研究課題である。
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