研究概要 |
本研究は、色覚機構を色彩対比、色彩順応及び色彩恒常性の三現象を切り離すことなく、全体的に捉える視点から理解することを目的として計画された。このために、時間・空間的配置を変数として,種々の色彩の平面立体図形の作成・提示を容易にし得る装置が必要となった。昭和63年度にイメ-ジ・メ-カを選定した。この機器により,色や形態の作成・編集が容易になった。又、知覚反応側定機、画像スイッチャ及び各種インタ-フェイスを実作し,実験を進めた。このようにして,画像メモリ,カラ-モニタ,コンピュ-タ及び画像スイッチャ有機的に,空間的・時間的に任意の画像を構成できる視覚刺激提示システムは一応の完成をみた。 研究実験の成果としては,コンピュ-タ制御によるCRT上での画像観察による対比現象の分析から順応,さらに色恒常性と画像要因との関係及び,これに基づく三現象の総合的理解の解析が可能になったことがある。精神物理学的研究により,錐体・桿体相互用の存在範囲が,短波長背景と錐体の仂きにより決まることを示唆し,明所現から暗所現に至る色覚現象の基本的機序を考察するための貴重な知見を得た。又,黄青反対色過程の相互機序モデルを提唱し,上記三現象の統一的理解への足掛りの一つとした。さらに,視知覚系の集団的挙動に示される複雑な統合機能を神経信号間の構造関係の統計的分析手法により明らかにし,色一形知覚にとって最も重要・ 適切な変換が空間情報の符号化に関係することを示した。この結果はCRT画像上での色及び形知覚を考察する上で一つの重要な枠組みとなる。 以上のごとく,順応、対比及び恒常性に関する色彩知覚現象の統一的理解の基礎研究に必要な装置の作製,及びこれを用いて基本的デ-タの獲得が可能になったことにより,今後も引き続き解析が進められる。
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