本年度の研究実績は大きく二つの問題に分けられる。第一は、色彩対比及び同化現象の解析である。大小二つの正方形を中心で重ねてCRT上に提示し、中心の無彩色小正方形部分(被誘導野、視覚43')に、これを取囲む大きい正方形(誘導野、視覚6°)の色彩が及ぼす影響について観察した。被誘導野の明度が低い(黒)の場合にはそこに誘導野の色彩と同色系の色相が現れ(同化現象)、高い(白)の場合には反対色系の色相が観察される(対比現象)傾向を認めた。暗い被誘導野にみられる同化現象は、周辺の色彩により境界に生じた眼に見えない対比色ー両野の間で起こっている明るさ対比でマスクされ閾下にあると仮定するーとの対比色として考えられないかについて検討を進めた。特に周辺部と中心部の大きさ関係、明るさ水準、周辺誘導野の色彩、順応等の要因を含めて研究は続けられている(秋田担当)。 第二は、色覚過程における時間・空間情報の抽出という観点から、視覚系における視覚情報変換機序を錐体、神経節細胞、及び皮質細胞のレベルに分けて考えた。各レベルにおいて色情報が加工されるプロセスを錐体、反対色、及び空間二重反対色の諸過程から分析しモデルを提案した(江島担当)。 さらに、本年度は本課題による研究の総括の年であり、主たる成果をまとめ報告書を作成した(秋田担当)。
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