研究概要 |
中央北海道を南北約300kmにわたって分布する日高火成活動帯の垂直断面は中央北海道南部の日高山脈地域(日高変成帯主帯)において良好に観察される。また日高火成活動帯内部にはアイスランダイト質深成岩が分布する。 ソレアイト質層状分化岩体であるパンケヌシかんらん石斑れい岩体,それに貫入する千呂露ドレライト岩脈,不均質でカルクアルカリ質の組成変化を示す芽室岳岩体について詳細な岩石学的・地球化学的検討を行なった。パンケヌシ岩体のトロクトライト,芽室岳岩体の斑れい岩,千呂露岩脈は全てNーMORBと同様の地球化学的性質をもっている。ここで特に重要なことは,カルクアルカリ質の芽室岳岩体もNーMORBに由来していることである。カルクアルカリ質岩は一般に火成弧を特微付ける火成岩と考えられており,これまでの日高火成活動帯の造構論においても,カルクアルカリ質岩類の産出は火成弧と考える大きな根拠であった。しかし,芽室岳岩体の地球化学的性質は,火成弧と考える根拠がないことを示した。日高火成活動は中央海嶺の火成活動が陸源性砕屑物(日高累層群)の中に侵入したと考えれば最も容易に説明可能である。例えば,中央海嶺の収束的プレ-ト境界への沈み込み,あるいは陸域に大変近い位置に中央海嶺が存在したなどのモデルを想定しうる。しかし,弧火成活動として現在認識されている特微は成熟した火成弧の情報に基づいている。海洋プレ-ト内に発生した弧火成活動の開始期の実態は十分に理解されていないかもしれない。日高火成活動を開始直後に停止した火成弧火成活動とみなすことの検討も必要であろう。日高火成活動帯内のアイスランダイト質岩は,海嶺において産出例が報告されている鉄に富む安山岩類とは明瞭に異なり,むしろ海嶺近傍のホットスポット上に産出する鉄に富む安山岩類と良く類似している。
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