研究概要 |
転移性癌細胞表面にはウロキナ-ゼ(UK)受容体があり、細胞接着部位(接着斑)でクラスタ-を形成する。このオ-トクライン型膜結合UKの細胞生理機能の一部を明かにした。 1.UKは受容体に結合するとチロシンキナ-ゼ(cーsrc産物、pp60)によりAー鎖のチロシンがリン酸化される。また蛋白質キナ-ゼCによりAー鎖とBー鎖のセリンがリン酸化される。Aー鎖(Gドメイン)には細胞増殖効果がありシグナル・伝達を担っている事が分かった。Bー鎖(Pドメイン)はプロテア-ゼ活性を持ちプラスミンと連携して細胞外マトリックスを分解する。 2.細胞から精製したリン酸化UKの酵素反応は人工基質では非リン酸化UKに比べて小さいKmを持ち、Kcat,Kcat/Km(酵素効率)は共に大きい。プラスミノ-ゲンではKm,Kcatは大きくKcat/Kmは一桁小さい。即ち、天然基質に対する親和性は低いが、基質と結合すれば大きな回転数で限定切断する他フイブロネクチン等のマトリックスも分解する。特異性のスペクトラムが広くなっておりさらに、PAIー1,ー2(インヒビタ-)の阻害がかからなくなっている事が判明した。またコンピュ-タを用いて構造分析をした結果、分子論的に大変興味ある結果を得た。 よってUK分子にあるドメイン(G,K,P)はそれぞれに対応した機能を持つ事が分って来た。その機能発現の舞台は細胞内外のジャンクションに相当する接着斑(偽足)であり、機能的膜ドメインを形成している。ここで2種類のリン酸化酵素による生理学的モジュレ-ションを受け、癌細胞の浸潤に深く関わる。UKは血栓溶解酵素として広く知られているが、ここに機能的なル-ツがある。この点をさらに明かにする事が今後の重要な課題である。
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