研究概要 |
クロ-ン化した転移性ヒト癌細胞(C5)に特異受容体を介して結合するオ-トクライン膜結合ウロキナ-ゼ(UK)の細胞生理機能を解明するために今年度は以下のことを明らかにした。即ちUKやその受容体結合可能アミノ末端断片を蛍光ラベルし検索した結果、受容体は細胞接着部位に局在した。さらにこの部位のUKと関連蛋白質を分析した。 1.受容体は別の蛍光色素でラベルした抗ビンキュリンと同じ分布を示し、アクチニン、アクチン繊維の末端部位とも一致した。接着部位は反射干渉法によりプラ-クとして観察され、蛍光分布と一致した。 2.適当な表面活性剤処理により調整した細胞から接着部位の蛋白質を抽出し、ハイドロキシアパタイトカラムで分析した結果、UKは高濃度リン酸で溶出し、リン酸化を受けている。In vitro,in vivoでのリン酸の取り組みからもUKのB-鎖のみがリン酸化される事が認められ、細胞レベルのオ-トラジオグラフィ-法でもリン酸化が確認された。アクセプタ-アミノ酸はチロシンとセリンである。抗体と阻害剤を用いた実験からチロシンはpp60c^<src>により、セリンはタンパク質キナ-ゼCによりリン酸化される事が分かった。 3.これらの事を説明する為に、コンピュ-タを用いてハイドロパシ-とチョウフアスマンの分析を行い、分子論的にたいへん興味ある結果を得た。 今後は、受容体結合UKがマトリックス分解能を持つことから、癌遺伝子産物による膜蛋白質リン酸化のモジュレ-ションに力点をおいて、癌細胞潤滑における蛋白質群の連係プレ-を分子・細胞レベルで明らかにする。
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