研究実績の概要 |
スピン流ー電流変換現象に焦点をあて、強誘電体界面・表面の研究を推進した。運動量空間の有効磁場である、ラシュバ係数を具体的物質について非経験的に求めることは新しい高効率なスピン流ー電流変換物質をデザインする上で大変重要である。今年度は計算物質デザインとして、基板歪みによってSrTiO3表面に大きなスピン軌道分裂が生じる可能性があることを明らかにした。この成果はN. Yamaguchi and F. Ishii, First-principles Study of Rashba Spin Splitting at Strained SrTiO3 (001) Surfaces, e-J. Surf. Sci. Nanotechnol. 16, 360-363 (2018) として論文にまとめられた。 以前から継続して研究を実施してきたBi2O3/Cu(111)界面のラシュバ効果について、実験グループが測定した光誘起のスピン流ー電流変換について非占有状態のRashba分裂を計算することで、理論的なサポートをおこなった。これらの研究成果はJ. Puebla, F. Auvray, N.Yamaguchi, M. Xu, S. Z. Bisri, Y. Iwasa, F. Ishii, Y. Otani, "Photoinduced Rashba spin to charge conversion via interfacial unoccupied state" arXiv:1902.00237として論文にまとめられた(投稿中)。他の公募班との共同研究として、スピネル型構造Ir2O4薄膜について基板制御を想定した系統的な電子状態計算をおこなった。その結果、スピンのN極とS極が分化した単極子が粒子のように振る舞う「U(1)量子スピン液体」状態が,従来よりも高温で出現しうることを理論的に見出した。この成果は S. Onoda and F. Ishii, “First-principles design of the spinel iridate Ir2O4 for high-temperature quantum spin ice”, Physical Review Letters. 122, 067201-106, (2019)として論文にまとめられ、プレスリリースをおこなった。
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