公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
ゲル化点の臨界組成よりもややゲル側の組成で得られる擬臨界ゲルは,「ダングリング鎖を多量にもつ非常に疎な無限大網目」と「様々な分岐形態と広いサイズ分布をもつ有限フラクタルクラスター群の溶媒(ゾル成分)」から成る超ソフトゲルである。擬臨界ゲルの静的・動的な階層ネットワーク構造が非線形レオロジー挙動に生む特異性を明らかにし,その分子論的起源を解明することを目的とする。特に,(i)極端に疎な網目骨格に由来する非線形弾性,(ii)大きく異なる緩和時間をもつ疎な無限大網目とゾル成分から成るゲルの非線形粘弾性,(iii) 擬臨界ゲルが示す異常に大きなひずみ速度依存性をもつ伸長特性,の解明に焦点を当てる。
ユニークなトポロジー的特徴をもつ高分子ゲルとして、ロタキサン分子による8の字架橋点をもつポリロタキサンゲルが知られている。最近、ポリロタキサン中の環状分子の数を極端に減らした低包接率ゲルでは、一軸伸長時の極限伸びが著しく増加することが報告された。本研究は、この低包接率ゲルの大変形挙動を二軸伸長を用いて調べ、著しい極限伸びは一軸伸長に限定され、二軸伸長では極限伸びは極端に減少してしまうことを明らかにした。これは、8の字架橋点による高分子鎖の変形時の供給機構が変形モードに強く依存し、二方向から張力が作用する二軸伸長では鎖の供給が二方向に行われるため供給量が限定されてしまうことに由来する。ゲル化点直上の臨界ゲルから有限クラスター群を分離し、極端に疎な無限大クラスターのみを抽出すると、フラクタル構造をもつゴムとして挙動することを見出した。具体的には、6桁以上に渡って緩和弾性率が時間の冪乗則に従うとともに、kPaオーダーの著しく低い弾性率、および30倍を超える高伸長性を示すことがわかった。また、この特徴は化学構造には依存しない一方で、粘弾性指数は架橋の分岐度に依存することを明らかにした。これらの結果は、8の字状の架橋点、およびフラクタル的な階層構造をもつ高分子網目といったトポロジー的な特徴がマクロな力学物性に強く反映されることを示したものである。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
ACS Macro Letters
巻: 11 号: 3 ページ: 362-367
10.1021/acsmacrolett.1c00801
Macromolecules
巻: 54 号: 22 ページ: 10468-10476
10.1021/acs.macromol.1c01680
巻: 54 号: 5 ページ: 2353-2365
10.1021/acs.macromol.0c02737