公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
本研究では、結晶多形を示す配位化合物の分子結晶状態における光物性の解明と学理の構築を目指す。配位化合物間の相互作用においては、金属間相互作用と配位子間相互作用が競合するため、これらの多点での相互作用をバランス良く考慮する必要がある。また、配位化合物の励起状態はしばしば電荷移動状態になるため、長距離のクーロン相互作用を考慮する必要がある。本研究では長距離補正された密度汎関数法をベースに、金属間相互作用と配位子間相互作用の競合する分子結晶を取り扱う手法を開発して、配位化合物からなる分子結晶の励起状態と発光機構の解明に取り組む。
ソフトクリスタルを構成する分子の多くは、多彩な分子間相互作用を有する。分子間相互作用は、励起状態からの緩和経路の変調や、複数の分子間に広がる新たな電子励起状態の形成をもたらすため、ソフトクリスタルの発光機構の解明には、複数種の分子間相互作用を適切に考慮した理論手法が必要になる。本研究では、金属間相互作用と配位子間相互作用の競合する分子結晶の発光過程の学理を構築することを目指して、計算手法の開発と応用を行ってきた。本年度は、QM/MM法の独自実装を進めた。QM計算には高速なRI-DFT計算が可能なTURBOMOLEを利用し、MM領域は点電荷とLennard-Jones(LJ)ポテンシャルとして扱った。SCF計算を行う際に、MM原子の位置にDFTから求めた自然電荷を考慮した。その後、エネルギー勾配を計算した出力ファイルに、各QM原子がMM原子から受けるLJポテンシャルからの力を追加するルーチンを作成し、これらの力を用いて構造最適化を行うようにした。金イソシアニド錯体10分子を結晶構造から切り出し、そのうちの2分子をQM領域、残りの8分子をMM領域とした構造最適化を基底状態、および第一励起一重項状態に対して行い、MM領域の有無で最適化構造に違いがでることを確認した。今後は、実験結果の解析に向けた計算を進めて行く。また、前年に引き続きクラスター錯体の研究も進めた。今年度は、同じAu25SR18(SRはチオール)で表される2つの構造異性体の光物性の解明に取り組み、コアになるクラスターが対称性のよいコンパクトな形状を取ると原子が密に集まり電子密度が上がる。その結果、HOMOが不安定化してHOMO-LUMO gapエネルギーの低下と吸収ピークの低エネルギー化をもたらすことを明らかにした。関連して、異種原子ドープによる金・銀クラスター錯体の発光機能の向上などについての共同研究も行なった。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (11件) (うち国際共著 2件、 査読あり 11件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (2件)
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